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ブルームーン 2008年04月
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  228

私の帰る場所

浮気は文化だ!

芸能人の誰かが言ってたっけ?

何を馬鹿なことを!

私はその浮気のために全てを捨てようとしているのに。

 

 

 

彼に出会ったのは半年前の冬だった。

寒い手を擦りながらようやくたどり着いた喫茶店に入ったが席が一杯で、知らない男の人と相席する羽目になった。

それが彼だった。

出会いは別に珍しくもない。

私は格段彼に興味を示したわけでもないし、温かい紅茶を一杯飲めれば喫茶店から出て行くつもりだった。

目の前に紅茶が置かれる。

私は急いでそれを飲もうとしたが、正面から視線を感じた。

「あの……何か?」

 私は人の姿をじっと見つめる彼を訝しげに見た。

「あっ! すみません! 唯、よほど寒かったんだろうなと思いまして」

 彼はそれだけ言うと鞄をごそごそとやりだした。

 新型の暖房機でも売りつけられるのかしら?

 冗談じゃない……。

 私はもう一度、紅茶のカップを持とうとした。

「あっちょっと待って!」

 彼は慌てた様子でそれを止めた。

 何だって言うの? 紅茶が冷めちゃうじゃない!

 私は苛々して彼を睨み付けたが、彼はにっこりと笑うとブランデーのビンを取り出した。

「これこれ! 寒いなら、紅茶にブランデー入れたらいいですよ。香りが尽くし、それに温まります!」

 彼はそう言うと私の紅茶にブランデーを入れた。

 私が「あっ!」と思った時にはもう遅く、ブランデーは湯気の出る紅茶へと溶けていった。

私はしょうがなくその紅茶に口をつけた。

「美味しい……」

 私は思わずそう言ってしまった。

「でしょ?」

 彼は嬉しそうに私を見た。

 それが恋の始まり。

 それから私は週に二日ぐらいの割合で彼に会っていた。

 旦那はいつも帰りが遅く、会話もほとんどない。

 浮気をしている罪悪感はなかった。

 最初はビクビクしていたが、いつの間にか向こうにも彼女がいるんだからと勝手な想像で割り切っていた。

「なぁ……、一緒に暮らさないか?」

 彼が私にそう言ったのは、春の事だった。

「えっ?」

「俺と一緒にさ……」

 彼は照れているのか視線を合わさないようにしてそう言った。

「でも……」

「結婚しているのは知ってる。でも、君だってこんな状態辛いだろ?」

彼は低い声でそう言った。

 正直、彼がそう言ってくれたことは嬉しかった。

 でも……いくらなんでも、旦那のいる身である。

 十代の少女のように満面の笑みを浮かべて頷く事はできなかった。

「考えといてよ……」

 彼はそれだけ言った。

 それから二週間。答えは出た。

 私は家に鍵をかけると、駅に向かって歩き出した。

 電車に乗って何所か遠くで二人で暮らそう。

 彼はそう言った。

 念のため貯金通帳は持ってきていた。

 やはり、あまりに惨めな生活はしたくない。

 我侭なのは分かっているが、これは旦那に対する復讐でもあった。

 あなたがもう少しかまってくれていたらこんな事はしなかった。

 駅のホームに着いた。

 私は彼の顔を見つけた。

 驚かせてやろうと、彼の背後に回る。

 チャラーラー チャラーラー

 聞いたことのあるメロディが、彼のポケットから鳴り出した。

 携帯電話だ。

「はい。ええ、大丈夫です。まるで怪しんでいません。ええ、通帳も持ってくるように言いましたよ。大丈夫です。旦那に浮気をされるような主婦なんて、こっちの事疑ったりしませんよ。ええ、いい鴨ですね」

 彼は電話でそう言った。

 私は頭が真っ白になった。

 今のはあの彼の言葉なの?

 信じられなかった。信じたくなかった。

 気がついたら私は泣きながらいつもの家へ続く道を歩いていた。

 情けない……。一度は捨てた家なのに、自分には戻る場所がここしかないなんて。

 涙は一つずつポロポロと流れた。

 馬鹿みたいね。若い女の子じゃあるまいし、男に騙されて泣くなんて。

ツゥルルー ツゥルルー 

自分の鞄の中で携帯電話が鳴り出した。

きっと中々来ない私に彼が痺れを切らしてかけてきたに違いない。

やっぱり……。

私は携帯電話の液晶に彼の名前を見てそう呟いた。

無言で電源のボタンを押す。

ツゥルルー ツゥルルー

彼からの電話を切って直ぐにまた携帯電話が鳴り出した。

私は苛々しながら電話に出た。

どうせ彼だ。

なんて嘘を吐いてやろうか? それとも、彼の嘘を見抜いたことを自慢げに語ってやろうか?

「はい……」

 結局私はその二文字しか言わなかった。

 いや、言えなかった。

 何を言っても惨めになるのは自分だって分かってたから。

「俺だけど? 如何した? 不機嫌な声出して」

 声の主は旦那だった。

 私は驚いた。携帯に電話なんてかけてきたことない人なのに。

「お前今何所にいるんだ? あの手紙は何なんだ?」

 旦那の弱々しい声を聞いて、私は自分が置いてきた手紙を思い出した。

 手紙には唯出て行くことだけを示しておいた。

 早く帰った旦那はさぞかし驚いただろう。

「何とか言ってくれ! 何所に行くんだ? 迎えに行くから! 教えてくれ!」

 旦那の声は悲鳴に近いものだった。

 私はくすっと笑うと、

「今日何が食べたい?」

 そう尋ねた。

旦那は、

「……何もいらない。唯、お前だけは帰ってきてくれ。こんな日に出て行くやつがあるか!」

「こんな日?」

 私は不思議そうに尋ねた。

「今日お前誕生日だろ……?」

 気がつかなかった。

もう何年も祝ってない誕生日。

旦那はそれを覚えてくれたのか……。

頬にさっきとは違う種類の涙がつたっていくのに気付いた。

今日はよく泣く日だわ。

「今から、帰るから……せめてお茶ぐらいは入れておいてね」

 私は手の甲で涙をふきながらそう言った。

 さぁ、自分の家に帰ろう。

 話す事はたくさんある……。

 


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No  227

Les Terre du Sud 2005

 私の旦那は浮気をしている。

 若いホステスから、何所から連れて来たかわからない中年の女まで、そのバリエーションは幅広い。

 浮気なんてするぐらいなら如何して結婚なんてしたのかしら?

 家事をして欲しかったから……?

 出世の為には結婚している事が大事だから……?

 全く、男の人の考える事は少しずれてるわ。

 女は首を振ると、ワイングラス一杯にLes Terre du Sudテール・ド・シュド)の2005年を注いだ。

 このロゼのワインは最近、女のお気に入りだった。

 旦那が帰ってこない夜は必ずこのロゼで一杯やるのだ。

 果実の味わいを感じながらこのロゼを飲んでいるといつのまにか心が落ち着いてくるのだ。

 女はグラスを少し持ち上げて、グラスを満たすロゼの色合いを見た。

 薄いピンク色で、それは儚い青春の恋のようだった。

 女も歳相応にいろんな恋はしてきたつもりだ。

Bourgogne Pinot Noir(ブルゴーニュ・ピノ・ノアール)の赤ワインのような身体を熱くさせる、燃えるような恋だってしてきた。

逆に、William Fevre Chablis(ウィリアム・フェーヴル・シャブリ)の白ワインのような爽やかさを感じながら苦味やこくのある複雑な恋だってしてきた。

それでも、このロゼにあうような儚い、若いうちにしかできない夢のような恋愛はしたことがないと感じた。

女は昔から少しませた子供だった。

初体験は中学生で済ませて、高校生の頃から彼氏を切らしたことがなかった。

大学生になるとろくに学校にも行かずバイトに精を出した。

自給八百五十円。始めてもらった給料の少なさに愕然とした。

あんなに齷齪働いたところで得るものは月に数万円のお金。

そう思った時、女は夜の世界へと入っていった。

一日数時間で月に得たお金は十万円単位のものだった。

お酒を飲んで愛想笑をして、金持ちのおっさんの相手をする。

仕事はそれだけの事だった。

若くて、女であればそれでいい。

そこはそんな世界だった。

今の旦那も結局、店のお客さんである。

向こうが一方的に惚れ込んで、プロポーズをしてきた。

丁度その時大学の四回生で、就職も決まってなかったから二つ返事でOKをだした。

それから十数年。

よく続いたものだ。

旦那と私は恋をしなかった。

いつまでたっても、旦那は客であり、私はホステスである。

その関係は変わる事がなかった。

いつしか旦那は浮気を始め家に寄り付かなくなった。

そして、旦那しか客のいない私だけの店はいつしか一人で酒を飲む部屋へと変わっていった。

最初はビールだった。缶ビールを机一杯に空き缶が広がるほど飲んだ。

アルコール中毒に近い状態になったこともある。

ワインに出会ったのはそんな時だった。

大学時代の友達が電話でこう言ったのだ。

「あなたのところはお金があるんだから、安いビールで身体を壊してないで高いワインでも飲みなさい」

その時は何を馬鹿なことをと言って笑ったが、後になって無性にワインが飲みたくなった。

それなりに値段の張るワインだって飲んだが、最後に行き着いたのはLes Terre du Sud2005年だった。

値段は二千円足らず。

そのワインに出会った時、はっきりと道を間違った事を悟った。

私はまだ、人生のLes Terre du Sudを味わってない。

そう気付いた。

その時に買った三本のボトルも、もうじき空になる。

女は最後の一本を飲み干すと、徐に立ち上がった。

大きな引き出しには一枚の紙が入れられていた。

『離婚届』

女はほろ酔いの身体をしゃきっとさせると、判子を押した。

これでいい……。

女は寝室から一つの鞄を取り出す。

この家で必要なものは自分の身とこの鞄だけだ。

女は机に一枚のメモ用紙を置くと、鞄とワインの栓を手に持って家を出た。

鍵は郵便ポストから家の中へと放り込む。

ワインの栓からは、消える事のないLes Terre du Sudの香りがしていた。

 

『人生のLes Terre du Sudを探しに行きます。さようなら

 

部屋にはそう書かれたメモ用紙がワインのビンの下に置かれていた。

 

 


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No  226

浮気誓約書

 これは私とあなたの浮気誓約書。
 第一条、私からあなたへ電話をかけないこと。
 第二条、あなたから私へ最低でも一週間に一回は連絡すること。
 第三条、お互いを理解して無理を言わないこと。
 第四条、お互いが必要で無くなった時は素直に別れること。
 そして、第五条、夢を見ないこと。

 私は携帯の着信履歴を開いた。

 あなたからの電話。
 もう、一ヶ月もかかってきてない。
 契約違反だわ。
 女は通話のボタンを押そうとして止めた。
 どうせならもっと驚かせてやろう。
 女は脱ぎっぱなしでソファにかけてあったコートを着ると髪にブラシを通した。
 口紅とファンデーションを塗り直す。
 それは、最低限の身だしなみ。
 女はドアから外の世界に出ると、一目散にある場所を目指した。
 あなたがいるところへ。
 あなたの会社の前で少し待つ。始めて会った時もこの場所だった。
 フラれたばかりで酔っ払ってここで寝てしまっていた私に声をかけてきたのがあなた。
 直ぐに意気投合して、飲み屋をさらにはしごした。
 あなたに奥さんがいるってわかった時はショックだったけど、それでもいいって言いながらホテルへ行った。
 あなたを感じて、離したくないと思って、あの誓約書を作った。
 それが、秘密の関係の始まりだった。
 女はふと時計に目を落とした。
 時間はもうすぐ五時。
 あなたはいつも定時であがって出てくる。
 働く気がないのねっと笑いあったものだ。
 五時の迎えがきた。
 会社という大きな箱から突然大量の人が出てくる。
 まるでびっくり箱ね。
 最初に出てくるのは若いOLで、あなたはもう少し後。
 女は視線の先に、求めていた男を見つけた。
 女は座っていた少し高め花壇のブロックから立ち上がって男の元に行こうとした。
「あっ……」
 女はもう一度ブロックに座り込んだ。
 男の隣には、若いOLが恥ずかしげもなく腕を絡めている。
女は思わず視線を反らした。
 一ヶ月も連絡がなかったんだからわかってもいい筈だった。
 鈍いにも程がある。
 最初から、私は夢を見てたんだ……。
「契約違反は私の方だわ……」
 女はフッと笑うと鞄の中から一枚の紙を取り出した。
 浮気誓約書。
 女はその紙を丁寧に小さくちぎっていった。
 細かく破られた紙は時折女の手を抜けて空へと舞い上がった。
 ひらひらと。
「これで、契約は破棄よ」
 女はそう言うと、手のひらをゆっくりと開いた。
 握られていた紙は少しずつ、風に乗って埃の舞うアスファルトへと飛んでいった。


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No  225

メビウスの輪

あなたと私の関係はまるでメビウスの輪みたいね。

表と裏が入り組んで、どちらが真実なのかわからない。

ただ言えることは……あなたを愛しています。  

 

冷蔵庫から一本の缶ビールをだす。

女にはその仕草が日課になっていた。

これくらいじゃ、酔えないわ……。

女はそう思いながらビールを飲み干した。

携帯電話がなる。

会えないあなたからの定期便。

「携帯なんて持つものじゃないわ……」

そう口にだしながらも、電話に出る。

「はい?」

「あっ!俺、俺。」

嬉しそうな男の声が聞こえる。

俺、俺って……今流行りの詐欺じゃないんだから、ちゃんと名前ぐらいいいなさいよ。女はその言葉を飲み込むと、

「どうかした?」

と素っ気なく聞いた。

会えなくて辛かったなんて死んでも言ってやるもんか。

女はこの一本の電話を心待ちにしていたが、弾んだような声を出すのはプライドが許さない。

惚れられているのは私。

夢中になっているのはあなた。

絶対にそうだから。

私はただこの不倫というゲームを楽しんでいるだけ。

それだけよ。

「何かあったの?声、いつもと違うわね?」

よく聞くと男が酔っているのがわかる。

お酒が物凄く弱くて滅多に飲まない人なのに……。

「酔ってるのね」

女はそう呟いた。

「……俺と別れてくれ」

女は耳を疑った。

「今何て?」

「俺と別れてほしいんだ……」

あなたは私が好きなんでしょ?

ベッドの中ではいつも言われてた。

離したくないって。

その言葉を信じた訳じゃないけど、あなたは本気だったじゃない。

「本気なの?」

女は何て言っていいのかわからなかった。

「ああ」

「それなら素面の時に言ってよ」

「素面じゃ言えないから、飲んだんだ」

男は低い声でそう言った。

「どうして?私のこと嫌いになったの?」

「好きだよ……」

「じゃあ――

「家内に子どもができたんだ」

「あなたは結局奥さんが大事なのね」

「そうじゃない!そうじゃないけど……」

馬鹿みたい……。

私は遊びだったでしょ?

この程度の男どうでもいいでしょ?

なのに、なのに!

「お前なら俺よりいい奴が見つかるよ。こんな平凡で、たいしたことない奴よりさ……」

男の呟く言葉の一つ一つが女の涙となって目頭から流れた。
そんな平凡でたいしたことない奴に惚れちゃった私はどうなるのよ! 

……本当に、馬鹿みたい!

女は夢中になって携帯電話の電源を切った。

この携帯電話はあなたからのプレゼントだった。

毎日電話したいからってあなたから私にくれた。

毎日、毎日あなたから私に電話をかけてきた。

だからなの?

別れの言葉ですら、あなたから私に送られるのね。

私はいつも愛される側だと思ってた。

あなたが私を必要として追い掛けてくるって。

でも、メビウスの輪はいつのまにか私たちの関係を表から裏へ変えてしまった。

別れてから気付いた。

私はあなたを愛してた……。

女は電源の切れた携帯電話をいつまでも大事そうに握りしめていた。


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No  224

子供ができたの

「あなたの子どもができたの……」

女は弱々しくその言葉を口にした。

「……すまない」

男はその言葉だけを口に出した。

「どうして?どうして謝るの?」

「悪いのは全部俺だ」

男がその台詞を口に出した時女の目からは涙が零れた。

「あなたが、本当に俺の子かって聞き返すような男なら、ここで諦められたのに……」

女は痛々しいほどの笑顔でそう言った。男は何も言わず女を抱きしめた。

「止めてよ……奥さんからあなたのこと奪い取りたくなっちゃう……だからそんな優しく抱きしめないで」

女はそう言いつつも男の胸に顔を埋めた。

「悪かった……。お前のこと傷つけて」

男は女の背中を軽く摩った。

「いいの……。あなたの子生んでみたかったけど、諦めるわ。もし、あなたがそのことで私を捨てるような男だったら絶対に生んであなたと奥さんの前に現れてやるつもりだったけど……」

女は悲しそうな表情のまま笑顔を見せた。

「そりゃ恐いな」

男も女に合わせて微笑んだ。

「私なんか可愛いものでしょ?」

「ああ。そうだな」

男はそう言うと泣きそうな彼女の口を唇で塞いだ。

「今のキス……」

女は軽く呟いた。

「えっ?」

「今のキスは別れの合図……ねっ?そうしましょ」

女は男の背中に回していた手を緩めると、男の腕の中でそう言った。

「……お前がそうしたいのなら」

男は女を抱きしめる腕にさっきよりも強く力を入れた。

「最後の我が儘聞いてくれる?」

「ああ」

「この子をおろすお金だけあなたからもらいたいの。意味の無いことかもしれないけど、あなたにこの子の命を摘み取ってほしいの」

女は目頭を押さえながら言った。

「わかった。そのお金は勿論俺が出すよ」

男は覚悟をしたように、大きく頷いた。

「ありがとう……」

女は男の腕から抜けると、もう一度口付けをした。

「さっきのはあなたから私への、今のは私からあなたへの別れの合図よ」

女はそう言うと、玄関の方へと歩いて行った。

「もうここへ来ることはないわ」

「ああ」

男は少し辛そうに女に封筒を渡した。

封筒の中には僅かながらの現金が入れられていた。

「これで足りるかい?すまないが、今の俺にはこれぐらいしか……勿論、金で片付くなんて思ってない。でも、お前がそう望むのなら」
「大丈夫。充分よ。ありがとう……。私の代わりに奥さんを幸せにしてあげてね……」

女はそう言うと、ドアを押して外の世界へと出て行った。

 

女は少し歩くと自動販売機でアルコール飲料を買った。

プルトップに指をかけて缶を開けると、一気に喉に流し込む。

「馬鹿な男……」

女は不適な笑みを浮かべながら、飲み終えた缶をごみ箱へと投げ捨てた。

好きな男ができた。二週間前のことだったか。今度その男と旅行に行くつもりだ。

「もしもし?あっ私。うん、そうよ。旅行のお金何とかなったみたい!」

女は先程の涙の痕など綺麗さっぱり消えていた。

女は電話を切るとふっと微笑んだ。 

「涙は女の武器ってね……」

 


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No  223

酒で丸めて浮気でこめる

?前書き?

ご存知の方もおられるとは思いますが、この題名は平安初期の歌人で六歌仙の一人である、喜撰法師の
「世辞で丸めて浮気を捏ねる」という歌詞をもじったものです。
世辞を丸めて浮気を捏ねるの意味としては、甘言で騙し、思わせぶりな様子で人の気を引くことだそうです。
この言葉はある意味では今の世の中にぴったりと言えるかもしれません。
男は女を支配し、女は男を騙そうとする。
そんな切なく怖いショートストーリを五日間に渡り紹介していきたいと思います。
全てのストーリーのテーマとして「浮気」と「酒」をあげています。
大人の世界を覗いてみたくて、当時の雪が少し背伸びした感じの作品が出来上がっていたかなぁ?と今では感じますw


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No  222

青空の向こうへ

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青空の向こうに
僕と歩いてみない?

綿飴みたいな雲を渡って
キラキラ光る雲の粒の
ひとつひとつに触れながら

右手には雲を掴んでみようよ
決して掴めないとしても

左手には君の手を握らせてくれない?
決して離さないと誓うから

何度拳を作っても
右手からでていく雲に
僕がため息をついたら
君の笑顔で笑わせて欲しいんだ
それだけで僕は幸せだから

その代わりそのお礼に
左手を今より
少し強く握るよ
君を離さないように

何度手をかざしても
雲の真ん中を通り過ぎる右手に
僕ががっかりしたとしたら
君の言葉で慰めて欲しいんだ
それだけで僕は頑張れるから

その代わりそのお礼に
左手を今より
少し優しく握るよ
君を壊さないように

だから
青空の向こうに
僕と歩いてみない?

それが決して
叶わない
夢だとしても
僕は君が
頷いてくれるだけでいいんだ



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No  221

キャンバス/平井 堅

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No  220

自信があるよ

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No  219

光合成!

kotoba71.jpg

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No  218

顔を化かしてみましょうか? 5

この記事は「顔を化かしてみましょうか?    」の続きになります。

アルバイトの時間になって仕方が無く雪は店内へと出て行くことになった。店長がゆっくりとドアを開くと、雪と同い年くらいの子達が数人入ってきた。店員は指示通りに店内に散らばって、女の子に色んな品物を進めていく。 雪が着てるようなブラウスやスカートだけでなく、鞄なんかも扱っていて、店内は中々賑やかだった。
お客さんは少ないというほどでもないのだが、開いたばかりで大盛況という訳でもなく、雪は何をしていいのか分からず、レジの近くでぶらぶらとしていた。正直、これにバイト代を払う店長は可哀想だなぁーと思うくらい働いていなかったのだ。
そんな雪を見てか、Mさんが、「このスカートならうちのスタッフが着用してますよ」といい、雪に手招きをした。雪が何ですか? という顔をしながらMさんのところに行くと、雪に「このお客さんお願い」と頼んでどこかに行ってしまった。中学生くらいに見える女の子達がスカートの色や種類について尋ねるのでマニュアル通りの返事を繰り返す。正直それだけでもいっぱいいっぱいだったのだが、ブラウスについている刺繍一つとっても真剣に悩む女の子を見ていて不思議な気分になっていくのを感じていた。
着飾ることに意味を成さないと考えていた雪である。刺繍糸の色が少し違うくらい、正直如何でもいいと思ってもいいはずなのだが、悩んでいる女の子達にそんなことは口が裂けても言えなかった。
雪の服を眺めては「こっちのやつよりあっちが良い!」とか、「この服だとお姉さんみたいにメイクはこういった色の方が良いですよね?」とか、言ったり尋ねたりする姿を見て、あぁお洒落をするってこういうことなんだなぁーと素直に感じた。
何と言うのだろう、着飾らない自分っていうものが雪は嫌いではない。自然体で等身大の自分で、それが本当のありのままの自分だと信じて疑わなかったからだ。だが、その感情が何所か自分に対する引け目のようなものだったと、その時気付かせられたのだ。中学時代の自分はテニスをやってた所為か肌も焼けていたし、スタイルだってよくないし、パッと見て目を引く美人だって訳でもなかった。そんな自分からみて、お洒落をしてキラキラしてる女の子が憎悪であり、どこか憧れであったのだ。どうせ自分なんて、そう思ったことが一番の原因だったのだろう。
もし、綺麗な服を着て、メイクも、髪の毛も、綺麗に綺麗にして、それで駄目だったら? 
何所かそう尋ねる自分がいて、そこに踏み出す為には相当の根性が必要だったのだ。
その当時の自分は綺麗にすることを「必要がない」という言葉で逃げていた。
唯、あの時そうやって着飾ってメイクをして人前に出たことで、そういう人たちといい意味で遣り合える気がしたのだ。
その後アルバイトは無事に終わった。Mさんに、「楽しかったやろ?」と尋ねられ、素直に、「はい」と返事が返せたほどだ。
バイト代の一部としてその時店長さんから頂いた服は、今もうちの箪笥に入っている。そして、それをみるたびに思うのだ。
お洒落をすること。
それは女性にとってある意味永遠に解けない問題の一つである。綺麗にすることに意味なんてあるのなんか誰も分からない。
男の人の気を引ける? 綺麗になったら親切にしてもらえる? 本当にそんなことのために世の女性は着飾っているのだろうか。
何時もより少しだけ可愛いスカートをはくこと。何時もより2cmだけ高いヒールを履くこと。何時もより明るめの口紅を塗ること。
これらのことに何か理由をつけるのだとしたら、雪の場合、それは全て自分のためである。
そうやって外に出ることで、自分に自信がつく。そうやって外に出ることで、何時もとは違った世界を見れる。そして、そうやって外に出ることで、何時もとは違う自分に会えるのだ。
気分が沈む時、泣きたい時、失恋した時、気合を入れたい時、思いっきり笑いたい時、雪は自分の洋服箪笥や化粧ポーチをひっくり返す。
その時の自分に一番あった自分を選ぶ為に。

「顔を化かしてみましょうか?」・完
5日間にわたる長い間のお付き合いどうもありがとうございました^^


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No  217

顔を化かしてみましょうか? 4

この記事は「顔を化かしてみましょうか?   」の続きになります。

即席の試着室のようなところでとりあえず服を着替えて、姿見に自分の等身大の姿を写して見た印象は、やっぱり最悪で、何でこんなことになったのだろうと、正直泣きたくなった。
スカートはヒラヒラとしていて不便だし、季節的にブラウス一枚では寒い。デザイナーさんには悪いがぬぎたいと思ってしまった。そんな雪にMさんは気付いたのか、「雪! 後が混むから着替えたらさっさと出てくる!」と叱るように言い出した。スタッフが10人ちょっとしかいなくて、試着室が3つなのに混むもんか! と少し抵抗してみたい気分もあったが、渋々と試着室から顔を出した。周りがモデルさんのような人ばっかりで、試着室から外を覗いた瞬間の劣等感は言葉では表せないほどであった。
Mさんは雪の手を引っぱって外へ出させると、鏡の置いてある椅子の前に座らせた。
「髪の毛と顔勝手にいじるから!」
言うが早いか、雪の肩くらいの長さだった髪の毛を器用にねじっていき、即席のパーマのようにしてしまった。 その時の手際がありえないほど良かったので、自分の後ろにいる人は何者なのだろうと真剣に考えたものだ。そして、その答えはMさんと付き合って結構経つ今でも出ていない。
更に凄いのはメイクであった。Mさんは、「終わってからのお楽しみ!」と言って雪の前にあった鏡をぱたりと倒してしまった。
ファンデーションはこっちで、チークの色はこれ。口紅は明るめのオレンジで、アイシャドウはこっちの方がいい……。
雪の前にしゃがみ込むMさんは独り言のようにぶつぶつとそういいながら、雪の顔をパタパタとはたいたり塗ったりとまるで絵でも描くように、化かしていった。
髪の毛をいじっていた時間も含め、全部で30分くらいで、どうやら雪はMさんの満足の行く結果に仕上がったようだ。その時になって初めて鏡を見る許可がもらえた。
その時の違和感は今でも覚えている。何と言うのか、そこにあるのは確かに自分の顔なのだが、自分の顔ではないのだ。自分でも見たことのない自分の顔がそこにあって、自分も知らない自分がそこにいて、鏡の中の人物には会った事があるような、無いような妙な感じだったのだ。
暫く呆然としていた雪にMさんは満足そうに笑うと、「なっ? これからやったやろ?」と言った。
「いや、メイクや髪型はともかくとして、スタイルばっかりはなんともなりませんって」
フッと正気に戻ると、先ほど感じた劣等感がぶり返してきたのだ。綺麗の代名詞のような人たちが周りに並んでいるというのに、一般庶民の雪に何をしろというのだ、そういいたくなったのだ。
雪のそんな言葉を聞いてか、Mさんはまた笑うと、「うちもこんなんやでー」とクルリと自分でまわって見せた。しかし、そうは言われてもMさんのスタイルというのはモデル顔負けと言ったもので、身長もかなり高いのだ。 「いやいや、Mさんが言っても説得力ないですから!」
雪がそう言うと、Mさんは考え込んだようにこう言った。
「世の中に今その辺にいる足の長いスタイルのいい女の人が何割いると思う?」
その言葉に雪が首を傾げると、
「あんなスタイルで綺麗な顔してたら、大抵の服は似合うよなー。でもさ、この店って高級ブランドなんかじゃないねんで? エステいって、ジムに行って、綺麗な女の人ばっかりが買いに来るわけじゃないねん。それやったら、私はほんまに必要なんはああいうモデルさんじゃないと思うねん」
と言うと続けて、
「うちとか雪とか、一般的な女の子が着るから、服なんて買おうと思うんじゃない?」
と笑った。まぁ、Mさんが一般的な女の子か如何かは疑問が残る所ではあったが、その言葉が腹をくくるきっかけになったのは確かだったと思う。

「顔を化かしてみましょうか? 5」へ続く


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No  216

顔を化かして見ましょうか? 3

この記事は「顔を化かしてみましょうか?  」の続きになります。

「来月の最初の日曜日絶対空けといてな!」
Mさんは雪にもう一度そう言って念を押すと、またにんまりと笑った。
「その日に何があるんですか?」
と雪が尋ねても、
「いや、だからアルバイト!」
と言って内容については詳しくは教えてもらえなかった。結局その日はそのまま別れて家に帰ったのだが、Mさんとバイト先で会う度に、何度となく日にちについては繰り返されていたので、雪の頭にはその日付がバッチシとインプットされていた。
Mさんはそれからというもの、休憩中に雪の髪の毛の長さを見ては「うん、いける!」と呟いてみたりと、なにやらおかしげな行動を繰り返すようになった。
結局、雪がバイトの全貌を知ったのは、約束の日の前日の土曜日のことである。
Mさんはこれ以上ないかというくらいいい笑顔で、数枚の紙を渡して来たのだ。
「何ですか? これ」
雪は紙を覗き込みながら尋ねると、「まぁ、読んでみって!」と言われた。
話の流れからして、Mさんの言ってたアルバイトがこれであることは分かるのだが、それは如何考えても自分に向いてるとは思えないものであった。
「紙渡し間違えてません?」と聞いてみるが、「渡し間違えてません!」と力強く言われるだけで、話が全く進まない。
「絶対嫌です!」
バイトの紙を見て、雪が最初に言った一言はこれだ。Mさんは予想通りと言わんばかりに爆笑して、「そう言うと思ったから、前日まで黙っててん」と得意げな顔で言い出した。
このアルバイトの内容というのを要約するとこういったものである。
とある洋服やのオープン記念フェスタのようなもので、そこで販売される服をマネキンだけでなく、実際にスタッフに着せてみて、動いた時の印象や後ろから見た印象などをお客さんに見せるといったものである。Mさんが雪にしろと言っていたのはこの洋服を着て接客をするスタッフである。すなわち、着飾って人前に出ろということであった。
いくら説明を受けても雪が持つ印象は「ありえない!」の一点張りであった。しかし、Mさんは「大丈夫、大丈夫」とケラケラと笑いながら、明日の時間や場所を指示してきた。
結局数枚の紙を受け取って家に帰ったのだが、心情としては聞かされた時と変わるものもなく、何度か行かずにサボってやろうか? と考えたものだ。だが、変なところで真面目な自分の性格が災いしてか、結局雪はその場所へと向かうことになった。Mさんの思惑通りに。
日曜日、そこに到着した雪に待っていたのは自分も衣装を来て、ヘアスタイルを整えられ、メイクをし終わったMさんであった。
「雪早く!」
Mさんはそう言うと、この間雪に選んだ服を渡し、着替えてくるようにと指示を出した。ぶつぶつと文句を言いながら、服を受け取る雪を見てMさんは笑いをかみ殺しながら、「あんた、それでも来るから可愛いよなー」とまるで妹のように頭をくしゃくしゃとしてきた。雪は無茶を言ったくせにまるで反省していないMさんを見て、「服が売れなくなっても私の所為じゃないですからね!」と半ば自棄気味に叫ぶように言って、衣装に着替えに行った。

……すみません! 長くなっちゃってます^^;
「顔を化かしてみましょうか? 4」へ続く


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No  215

顔を化かしてみましょうか? 2

この記事は「顔を化かしてみましょうか?」の続きになります。

翌日、約束の通りに雪は待ち合わせ場所へと足を運んだ。Mさんは約束の時間から少ししてからやたら大きな荷物を持って現れた。正直、雪が持つMさんの印象として、何をやらかすか分からない人というところがあったので、その荷物を見た瞬間嫌な予感が過ぎった。
その当時の雪の服装としては、殆どがジーパンにティシャツというものであった。
スカートなんて学校の制服以外に持っては無かったし、女の子らしい格好をすることに必要性を感じていなかった気がする。
その日もいつも通り、ティシャツとジーパンで現れた雪を見てMさんは満足そうに笑うと、荷物を雪に渡し、変わりに雪の腕を掴んだ。
「ちょっとうちの家行くで!」
そう言うとMさんはスタスタと歩き始めた。妙に重い鞄を肩に感じながら、引きずられるようにMさんの家へと連れて行かれた。
Mさんの家に入ると同時にMさんは雪に渡した荷物を開封し始めた。中には何所から持ってきたのか、大量の服が出てきた。その服というのも普段からみるMさんの趣味から外れている気がして、首を傾げたのを覚えている。
「雪、来月の最初の日曜休みやんな?」
Mさんはまるで四次元ポケットのごとく鞄から服を取り出しながらそう言った。
「休みですけど? 遊びに行きます?」
雪はMさんの部屋を見回しながらそう言うと、Mさんは、
「ちゃうちゃう、ちょっとバイト手伝ってー」
と言い出した。雪の顔が嫌がっていたのか、Mさんはフッと笑うと、自分の周りに散らかっている服を取って「どれがいい?」と言い出した。
「アルバイトの話してたんじゃないんですか?」
今度は意識的に嫌な顔をして、Mさんにそう尋ねると、Mさんはまた笑って、「そうやでー。で、どれがいい?」とまた言った。雪は思いっきり溜息を吐いて、「服の話じゃないんですけど!」というと、Mさんは今にも噴出しそうな顔をして、「だから、これがバイト!」と言った。
その言葉に訳が分からなくて、雪が首を傾げると、Mさんは子供のような笑みを向けて、「これなんか似合いそー」といいながら雪に服を見繕い始めた。
何故か急に着せ替え人形と化した雪は、Mさんに言われるまま何着かを試着させられて、結局はいたこともないようなヒラヒラしたスカートと白地に刺繍の入ったブラウスが選ばれた。
スカートをはきながらMさんを睨みつけていた雪を見て、Mさんは爆笑すると、
「いいやん! それ決定!」
とまたニヤリと笑った。話とは外れるのだが、Mさんとの付き合いの中で雪にむけられている笑みで一番多いのは間違いなくこの顔であると、言える。
雪の考えとは別に、この時のMさんのたくらみは着々と進んでいたようだ。

顔を化かしてみましょうか? 3」へ続く。


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No  214

顔を化かしてみましょうか?

凄く久しぶりにエッセイを書いてみようかと思う。
最近雪は髪の毛を短くしたという話をしたのだが、日本では失恋すると髪の毛を切るといわれていたりする。
これは色んな説があるのだろうが、そのうちの一つとして、昔から髪の毛には想いが宿るといわれており、その髪を切ることで想いを断ち切る――よって失恋という構図ができているといわれている。
雪に至ってもそんなに対したことを考えていた訳ではないが、髪の毛を切ることで少しだけ気分が変わった気がした。
では、自分の外見を変えることで心に与える影響というのは一体どういったものなのだろうか。
その例として女性に一番よく言われるのは化粧である。
ここで少し昔話をしてみたいのだが、雪が初めて化粧をしたのは、高校一年の時だった。
小・中学校とどちらかというと派手なタイプではなく、化粧というものに一種嫌悪に近い感情を抱いていた。
周りの派手に化粧をして、スカートを短くしている女の子達を見ると、馬鹿じゃないの? と何所か見下した感じで見てしまう自分があったのを覚えている。
スカートを短くして化粧をしたところで、喜ぶのはその辺の男の子で、先生には怒られるし、朝は早く起きなければいけないし、いい事なんてないじゃないかと思っていたのである。
そんな中学時代をへて、高校生になった雪は、アルバイトを始めたのだ。
アルバイトは近所のスーパーのレジで、接客業であった。接客業という職種の所為か、先輩は殆ど女の人で、一見して雪が苦手だなっと思うタイプの方も数多くいた。
それでも、仕事は仕事なので、黙々とこなしていたのだが、ある日のことだ。先輩の虫の居所が悪かったのか、雪の方に絡んできては、「接客業に素ッピンとかありえないー」とキャッキャッと笑って帰っていくという無駄な動作を繰り返してきたのだ。そりゃ、少しぐらいは化粧をした方がよかったのかも知れないが、その先輩はというと本当に素顔はどれですか? というレベルのもので、よっぽど「その化粧なら素ッピンの方がましですよ」と言ってやりたかったものだ。何度目かにその先輩がやってきた時に、いい加減頭にきていた雪が口を開こうとした時に、隣りのレジにいた雪の大好きな先輩――Mさんが、「あー確かにちょっと位の化粧は必要かも知れんけど、この子これから可愛くなるやろうからいいんちゃう? あっあんたはもう無理やわー。それ以上触るとこないし!」と笑顔で言ってくれたのだ。(Mさんについてはいい女とは をご覧下さいw)
Mさんという人の人徳か、その場はその先輩がすごすごと自分の持ち場に戻って終わったのだが、何だか嬉しい反面自分の所為でMさんの手を煩わせたと思うと少し申し訳ない気持ちになったのを覚えている。
その後のことだ、Mさんが休憩室で煙草を吸っている時に雪に、
「明日休み?」
と声をかけてきた。雪は学校もアルバイトもなかったので、
「休みですよー。あっさっきはありがとうございました!」
と言ったら、
「じゃあさ、ちょっと付き合って」
と言われた。この時のMさんが、悪戯を企む子供のように、妙にいい笑顔をしていたのが気になったが、翌日の昼過ぎにMさんの家の近くまで行く約束をし、その日は別れた。

「顔を化かして見ましょうか? 2」へ続くw


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No  213

奇跡

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No  212

好敵手

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No  211

君が!

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No  210

特等席

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斜め後ろ
君の髪がふわりと
風に舞うのが見える

斜め後ろ
授業中寝ている君の
横顔を覗き見

斜め後ろ
君の描いた落書きが
ちらりと目に入る

斜め後ろ
君が見つめる目線に
密かに嫉妬する

斜め後ろ
悲しいことがあった時の
君の顔も独り占め

斜め後ろ
そこは
君の事を見つめられる
私の特等席


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No  209

君の掌

学校の関係で時間がないので、過去に書いた短編小説のUPをします^^
お暇がおありの方、もし宜しければ覗いていってくださいw

 

 風邪を引いた。
 平熱より、少し高めの37.3度。
 頭がぼんやりとして、目線の先の天井はゆらゆらと波打つように見えた。
 そんな中俺が考えるのは、ある一人の女のことだった。
 三日前、喧嘩別れした彼女だ。
 いや、喧嘩自体は半年も前から続いていた。喧嘩の原因を探り始めたらきりが無くて、お互いがお互いの嫌なところを探しあって……。
 本当に如何してあんなことになったのか、自分でも分からない。
 付き合い始めた時は、彼女のことしか考えられなくて、彼女のことを知りたくて、彼女のことを見ているだけで幸せだった。
 別れる間際だって……
 たとえそれが、悪口だったとしても、彼女のことしか考えてなかった。
 たとえそれが、弱みを見つけるためだったとしても、彼女のことを知りたかった。
 たとえそれが、腹立たしさからだったとしても、彼女のことを見つめていた。
 なんだ、同じじゃないか……。
 あんなにも君を憎み、暴言を吐き続けていたというのに、やっていることは一年前君出会い付き合い始めたときと何ら変わっていなかったのか。
 好きの反対は嫌いじゃない。
 何所かでそんな言葉を聞いた気がする。
 今なら分かる気がする。好きの反対は嫌いじゃない。相手に感心を示さなくなったら、きっとそこは好きの反対になるのだろう。
 俺は、こんな状態でも彼女のことばかり考えてるのか。
 情けない。
 俺は君が嫌いなのに、如何しても如何でもいいとは思えないんだ。
 風邪を引いて思い出すのは一年前の君で、笑っている君で、優しく手を額においてくれた君なんだ。
 ガチャリ
 六畳一間の部屋に鍵音が響いた。
 あー、頭があがらない。俺は鍵をかけなかったのか?
 鍵が回りドアがそっと開いても、俺はその目を開けることが出来ない。
 誰かが部屋へとあがりこむ足音が聞こえる。
 止めてくれ。こんな部屋盗みに入ったって金なんて勿論無いし、持って帰る物なんて風邪のウイルスぐらいだ。
 ふと、俺の前で人の気配が止まる。
 何処かの誰かは俺の前にしゃがみ込むと、そっと額に手を置いた。
「……私、あなたなんて大嫌いよ」
「知ってるよ」
 俺は目を開かずにそう呟いた。
 目なんか開かなくたって、覚えているさ。ひんやりとした君の掌の感触を。
「大嫌い。でも、気になるの」
「ああ、その言葉……」
 彼女の言葉に俺は一年前の付き合い始めた日を思い出した。
 君はあの時も寝込んでいる僕にそう言ったね。
「ええ。一年前も同じことを言ったわ」
「大嫌いから始まったんだったね」
 俺は少し目を開いて心配そうに覗き込む彼女を見た。
「そうね。自分の身体を大事にしない人なんて嫌いよ」
 彼女は悲しそうに笑うとそう言った。あぁ、思い出した。喧嘩の原因。
 最初は酒ばかり飲む俺に君が注意をした一言だった。
 そう。君の気遣いの一言だった。
「あなたには何言っても無駄だもの……」
「そうかもしれない」
「でもね、私あなたのこと見捨てられないの。如何でもいい男なら、布団の上で倒れてたっていいはずなのに……」
 彼女は目に涙を溜めながらそう言った。
「言いたいことがあるんだ」
 俺は咳のでる口を押さえながら彼女を見た。
 彼女は俺の額から手をのけると、俺の目をしっかりと見つめた。
 俺は一度目を瞑り、わずかに残っている彼女の手の感触を確かめると、
「ありがとう」
 と言った。
「半年前に言ってくれたら喧嘩なんかしなかったのに」
 彼女はもう一度俺の額に手を置くと、汗で張り付いた前髪を払いのけた。
「ごめんな……でも、心配してくれてありがとう」
 俺はゆっくりとその言葉を声に出した。掠れる声でも上手く伝わったのか、彼女は少し笑うと、
「やっぱりあなたのこと嫌いよ。だから――」
 元気になったら会いに来て。
 彼女は耳元でそう囁くと、額にその冷たい掌の感触だけを残して部屋から去って行った。
 熱は平熱より少し高めの37.3度。
 この体温が君の掌を冷たいと思わなくなったら、君を迎えに行こう。
 俺は薄れ行く意識の中で、そう思った。



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No  208

いらっしゃいませ お花見へ

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ふんわりピンクに髪型染めて

聞こえる声に思い馳せ

 

酒の肴に昔話を

どうぞ 皆様ご一緒に

 

何時しかカップに花びら落ちて

風流 風流 飲み干しましょう

 

話もはずむし 酒も進むさ

嫌なことなんて 流しましょう

 

だって今日はお花見だ

結構結構 無礼講

 

何時しかお互い知らない同士

笑いあったら友達さ

 

呑んで 呑んで 疲れたら

そろそろお開き致しましょう

 

今宵も人に幸せを

髪の毛染めた甲斐もあったさ

 

楽しかったらまた来年

ピンクに染めて待ってます

 

人の幸せ養分に 人の笑顔を養分に

今度はますます綺麗に咲くよ

 

だから笑って帰ってください

但しゴミを忘れずに

 

 


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No  207

これは何せき?

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彼から送られてきた一枚のチケット 訳も分からずとりあえずその席に着席

 

球場がよく見える席 君が私のために用意してくれた特等席

 

席から見える電光掲示板 現れた名前で分かった君の試合への出席

 

九回裏ツーアウト 最悪の状態で君が立った打席

 

カキンッという音 綺麗な弧を描いて私の元に届いたソロホームランは奇跡

 

 


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No  206

2000HITリクエスト作品2

リクエストのお題で「桜の季節」を頂いたので短編小説を一本書いてみました。
最初に考えていたものと少しずれてしまって、こんな風になってしまいました^^;
如何しようか悩んだんですけど、折角書いたんでUPしてみますw

お題:桜の季節

 桜の花が咲き乱れ、辺りには騒がしいほどの笑い声が聞こえる。昼前からはじめた宴会はそろそろ酔いもまわってきて、ペースは徐々に落ちていた。

「ねぇ知ってる?」

 女は隣りでまどろんでいた男にそっと呼びかけた。

「何が?」

 男は少し疎ましそうに目を開くと尋ねた。

「桜の木の下には死体が埋まってるのよ。これは信じていいことなの」

 女は少し神妙な声で言ったが、男はなんだというようにまた目を閉じた。

「ねぇ、ちょっと!」

「聞いてるよ。一体如何したんだ? 急に小説のパロディなんて持ち出して」

「あら、知ってたの?」

「梶井基次郎くらい知ってるよ。君の影響で俺だって本くらい読むさ」

 男は少し得意げに笑った。

「あら、あなたみたいな人は梶井基次郎って言われても檸檬のタイトルくらいしか出てこないのかと思ってた」

 女の皮肉に男は少し顔を顰めると、

「……昔のことさ」

 と言った。実際、過去に似たようなことがあったのだ。

「本当に、この桜の下に死体が埋まってたら……」

「止めてくれよ。気味が悪い!」

「例え話よ」

 女は本気で嫌そうな顔をする男を見ながら少し笑うと、続けて、

「でも、そうかしら?」

「えっ?」

「もし……よ? 自分が死んじゃって、あんな風に冷たい石の中に入れられちゃうなら、いっそ桜の木に埋めてもらった方がロマンチックだと思わない?」

「俺は墓石の中でいいや」

「もう!」

 女は男の回答に気分を害した風でもなくふっと笑った。

 桜の木は風に吹かれてその花びらをふわふわと落とす。

「でもさ……」

「ん?」

 急に口を開いた男を女は不思議そうに眺めながら続きを待つ。

「何か似合いそうだなっと思って」

「似合いそう?」

「ん。お前さ、桜の木似合いそうだよな?」

「あら、ありがとう」

 女は軽い口調でそう言うとまた視線を桜の木に移した。

「でも、こんな綺麗な木が似合うっていわれると嬉しい反面気後れしちゃうわ」

 そんな女に対して男はクスリと笑うと、

「それこそ、梶井基次郎だな」

 と言った。

「えっ? あぁ、そうね。もし、この桜の木に死体が埋まっているならば、私はこの桜につりあうって言われても気にならないもの」

 女はまた笑いながら、買ってきたビールのプルトップに手をかけると、

「今こそ私は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑めそうな気がする」

 そういいながら口をつけた。男は桜の花びらと同じ色に染まる彼女の頬を見ながらふっと目を逸らす。

 ――本当に桜が良く似合う。

「なぁ」

「何? 飲みたい?」

 女は男に飲みさしのビールの缶を差し出す。男はその仕草に無言で首を横に振ると、

「埋めてやってもいいよ」

「えっ?」

「お前が死んだら……さ」

「まさか!」

 女はいい加減アルコールもまわっているのか、面白そうにケラケラと笑う。

「本当だって!」

 男は笑われたことに少しむっとした表情を見せると語尾を強めた。

「アハハハー。でも、ここならお花を供えてもらわなくても寂しくないかもね。お願いしようかしら」

 女は男を覗き込むとまた笑った。

「あぁ、埋めてやるよ。だからさ……」

「ん?」

「だから、お前が死ぬまで俺と一緒にいろよな」

 男はそう言うと、女の手からビールを取り、ごくりと飲み込んだ。体の中を冷めかけていたアルコールが巡って、顔に血が集まるような気がする。それが恥ずかしさからなのかなんなのか男には見分けがつかなかった。

 女はそんな男をぼんやりと見つめると、

「約束ね」

 と小さな声で呟いた。

「……じゃあ、生きてるうちは毎年一緒に桜を見ましょうか?」

 女は、にっと笑いながら男の顔を再び覗きこむ。

 男は中身の殆どなくなったビールの缶をポロリと落とすと、暫く固まった後ようやく、

「……あぁ」

 と頷いた。

 桜は相変わらず風に揺られてふわふわと花びらを落としていた。

 


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No  205

大好きな君

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思い切って外に出て
君と一緒に歩いた空は
いつも以上に輝いてるよ

寂しい時や泣きたい時に
君はいつも側にいて
唯座っていてくれるね

君と一緒に走ってる時
とっても楽しくて
嫌なことも忘れられたよ

僕のベッドで横になる君の
寝顔を見ながら
そっと頭を撫ぜるんだ

君は疎ましそうに
少し目を開けると
僕に持たれて眠りにつくよ

茶色い毛が印象的で
触るととっても柔らかくて
僕は大好きだよ

黒目の大きな目で
君が見つめると
つい可愛いなぁって思うよ

くるりと巻いた尻尾を
振りながら僕を見つけた
君は心底愛おしいんだ

だから お願い
これからも
僕の愛犬でいてください

大好きだよ


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No  204

真剣に……

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