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ブルームーン kiss―手の上に尊敬のキスを―11
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  119

kiss―手の上に尊敬のキスを―11

今年初の小説のUPになりますw
うーむ……年が変わってもネタが溢れてくる訳ではないみたいです^^;


『kiss―手の上に尊敬のキスを―11』

この小説は「kiss?手の上に尊敬のキスを?」
         10の続きになりますw


「ホルダー?」

 何時もとは違いぼんやりとしているホルダーをスバルは心配そうに見つめた。

「あっ、どうかなさいましたか?」

「私がというより、むしろホルダーが如何したの? このごろ少し変よ?」

「変……ですか?」

「うん。変!」

 きっぱりとそう言い切るスバルにホルダーは苦笑いを浮かべ、

「……ご心配には及びません。私自身の問題なんですよ」

 と言った。その言葉にスバルは少し顔を歪めると、

「そう……」

 と呟いて黙り込んでしまった。何時もならそんなスバルの少しの表情の変化にも気がつくホルダーであるが、この時ばかりは自分のことで精一杯であった。

「少し失礼します」

 流れた沈黙を断ち切るように、ホルダーはスバルの部屋から外へ出た。

 ガチャリとドアが閉まると、身体中の神経が緩んだかのように力が抜ける。アンバーが帰って以来、ホルダーの中に流れる居心地の悪い感情は、少しずつホルダーの身体を蝕んでいた。

「素直になれるくらいならもうとっくになっていると何故分からないんだ……」

 ホルダーはドアに持たれかかったまま、ゆっくりと目を閉じる。何時ものことではあるが、そのなにも無い闇の中に浮かぶのはスバルの笑顔であった。

 ホルダーはふぅと息を吐くと意を決したように立ち上がり、歩き始めた。

「ん? ホルダーか?」

 書類に目を通していた王――タウリはノックの音と共に顔を見せたホルダーを意外そうに見つめた。

「お願いしたいことがあります」

 ホルダーは何時もよりも重々しい声でそう言った。

「なんだ? スバル絡みか?」

「はい」

「スバルの婚姻のことか? それを止めろというのなら――」

「違います。……私を姫様の側近から外して頂きたいのです」

 ホルダーの言葉にタウリはポロリと手に持っていたペンを落とした。

「如何いうことだ?」

「私が姫様の側近でいることは姫様のためにならないのです」 

「だから、如何いうことだ?」

 タウリは同じ言葉をもう一度繰り返した。

「私は……姫様をお慕い申しております」

 ホルダーは消えそうな声でそう言った。タウリは真剣なホルダーの顔を見ながら、ふぅとため息をついた。

「だから何だというのだ?」

 タウリはそう言うと、普段とは違う鋭い眼光をホルダーへと向けた。

「私は十二の時に姫様に拾っていただきました。その時に私はこの国への忠誠を誓ったんです。アルデバランの為には姫様がリゲルの王子であるアンバーを好きになって下さるのが一番だと思っております。でも……私には無理なんです。醜い嫉妬に蝕まれて、姫様の婚姻を邪魔してしまいそうになるんです」

 ホルダーは淡々と話をしていたが、話していくうちにその表情は辛そうなものへと変わっていた。

「ほぉ……それで私に逃げ場を作れというのだな?」

 タウリは意地の悪い顔でニヤリと笑うとそう言った。

「違います! 私は唯……姫様とアルデバランの為に――」

「スバルの為? アルデバランの為? 言い訳であろう、そんなもの。お前がスバルとアンバーの婚姻を直視できないが故の逃避ではないのか?」

 ホルダーはタウリの言葉に言い返すことができず、唇を固くかみ締めた。

「それに、何故スバルがアンバーと結婚することがアルデバランの為であると思うのだ?」

「それは……」

「アンバーにはリゲルという国がある。これほど強い後ろ盾はないと言いたいのか?」

 タウリはホルダーを試すような口ぶりでそう告げた。

「違いますか?」

「違うとは言わない。だが、お前はアルデバランの為にスバルにアンバーと結婚しろというのか?」

「そうは言ってません! 唯、姫様がアンバー王子を好きになられるのであれば、喜ばしいことであると……。決して、姫様のお気持ちを無視してそうなればいいと願っている訳ではありません!」

 ホルダーは何時もの冷静なものではなく声を荒げてそう言った。

「それはスバルにアルデバランの為にアンバーを好きになれと言っているのではないのか?」

「違う……と思います。自分でも分からないのです。結局色んな言い訳をつけて自分が一番楽な選択肢を選んでいるだけかもしれません」

 ホルダーはそこまで言うと、目を伏せた。

「お前の気持ちは如何なのだ?」

「私の気持ちなど――」

「関係ないというのか? 関係ないのであれば如何して側近から外れるなどと言うのだ?」

 タウリは諭すような口ぶりでそう言った。

「分かっております。ですが……この気持ちを口に出すことは決してございません」

 ホルダーはそう言うと、悲しそうに微笑んだ。

「私は別にスバルが好きになる男であれば誰でも良いと思っている。そう、例え孤児であろうが……」

「そうですね……。あなたはそういうお人です」

 タウリの言葉にホルダーは表情を崩さずそう言った。

「お前は……何時の間にそんなに表情を作ることが上手くなったのだろうな……」

 ホルダーの顔を見つめるとタウリは何所か寂しそうに呟いた。タウリの手にはいつの間にか机の引き出しから取り出された、一枚の紙が握られていた。

「……これをお前に渡してやる。使うかどうかはお前次第だ。お前がもしそれを提出するのであれば、私は迷うことなく受理しよう」

 タウリはその紙をホルダーに渡しながらそう言った。その声には何所となく祈りが込められているようだった。

 ――『転任届』

 そう書かれた紙を見つめながら、ホルダーはまたゆっくりと目を閉じた。

 

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