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ブルームーン kiss―手の上に尊敬のキスを―12
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  123

kiss―手の上に尊敬のキスを―12

最初の予定では短編になる筈だったのですが……
何所で間違えたんだろう?230
バリバリの恋愛小説・ファンタジー・長編と雪の苦手な三拍子がそろってきて冷や冷やしております202(何で書いてんだ! っていうつっこみは無しの方向でお願いします^^;)

『kiss―手の上に尊敬のキスを―12』
この小説は「kiss?手の上に尊敬のキスを?」
         10 11の続きになりますw


「あらあら、ますますあなたの考えと離れてきたんじゃない?」

 いつの間に部屋に入ってきたのか。ホルダーが部屋を出て暫くたった後、コルがそう言った。

「私は別にホルダーを不幸にしたいわけではない。だが……少し自惚れていたのだ」

 タウリはふぅと息を吐き出しながら、消え入るような声でそう言った。

「自惚れて……?」

「あぁ。私はあいつが十二歳の頃から知っている。……何所かで本当の息子のように思っていたのだよ」

「そうね……私もそうだわ。だから、尚更あなたの意見には賛成できないの」

 こんな時でも明るい表情を崩さないコルにタウリは何所か救われていた。

「分かっているさ。しかし、思っていた以上にあいつの闇は深かったんだ……」

 タウリはそう言うと、目を瞑った。コルはそんなタウリを見ながら、一人遠い昔に思いをはせていた。

「スバルが拾ってきた……そんな表現が一番しっくり来るものね」

「あぁ」

 お互いそれ以後口を開こうとはしなかったが、頭の中に浮かんでいる映像は同じであった。

 そこには、深い悲しみと憎しみの闇に染まった一人の少年が存在したのだ。

「ここに来た時と比べて、あの子の表情は本当に明るくなったわ」

「あぁ」

「でも、それが間違いだったのかしらね。本当は表面を明るく繕うことではなく、悲しみをさらけ出して泣くことを教えてあげなければいけなかったのよ」

 コルはそれだけ言うと部屋後にした。一人部屋に残されたタウリは、手元の書類に視線を移したが、集中することなど到底できず、組んだ手の上に額をあてると、その漆黒の瞳を閉じた。

 

「ホルダー? 何所にいるの?」

 スバルは少し大きめの声でホルダーを呼んだ。

 おかしい。何時もならば、スバルが呼び終わるよりも早くスバルの側につき、頼みもしない用事までこなしてくれるというのに。

 スバルは小首を傾げながら、ホルダーを呼び続けた。その様子はまるで母親を待つひな鳥のように切ない。

「おかしいわ。こんなに探してもいないなんて……」

 思い返せば、六歳の時にホルダーに出会ってから、自分はホルダーの側を離れたことなど数えるほどしかなかった。それに、スバルが必要とするならば彼は何時でも何所へでもついてきてくれたのだ。そんな彼が何の用事もなく自分の前からいなくなることなどあるのだろうか。スバルは自分の中に問いかけた。勿論、答えは否。

「まさか何かあったんじゃ」

 王宮にいるのだから事故というのもありえない話である。しかし、スバルの胸にはまたとないほど嫌な予感が過ぎっていた。

「お願いよ、ホルダー。ふざけているのなら出てきて頂戴」

 まさかそんなことなどあるわけがないのだが、スバルはそう口に出さなければならないほどの不安に見舞われていたのだ。

「如何かされたのですか?」

「――アンバー王子!」

 スバルは目を見開いて、そこに立つ男を見つめた。記憶に新しい銀髪は間違いなくアンバーのものである。

「アルデバランに少し用事があったものでよらせて頂いたんですよ。それより、如何されたのですか? まるで怖いものでもいるかの様な表情をしていますよ」

「――! ……そんなもの、ありませんわ。それより、アルデバランに用事があるのに如何して私の部屋の前にいらっしゃるの?」

 スバルは先ほどの不安そうな様子が嘘であったかのように表情をきりりとしたものに変えるとそう尋ねた。

「そうですねー……あなたに会うことが私の用事ですから」

 アンバーははずむ声でそう言った。
「まぁ!」

 スバルは驚いた表情で笑うアンバーを見た。

「というのは冗談ですが、あなたにお会いしたかったのは本当ですよ。父に頼み込んで部下の仕事を奪ってまで、アルデバランに来たんですから」

 アンバーは少年のような笑みを浮かべながらスバルを見つめた。その顔にスバルの頬がほんのり赤く染まった。

「あなたは如何して部屋の前にいらしたんですか?」

「……探しものをしてたんですわ」

 スバルはそう言うと曖昧に微笑んだ。

「探し物?」

「ええ。とっても大切なものです」

「そうですか……。ところで、プロポーズの話考えてくださいましたか?」

 アンバーはまるで天気の話でもするかのようにそう切り出した。

「えっ? あっ……」

 スバルは慌ててアンバーの顔を見返すと、アンバーは悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

「――嘘ですよ。そんなに急かす気はありません。ですが、少しでも私のことを考えてはいただけませんか? その大切なものを少しの間忘れて」

「……」

 スバルは口を開こうとしたが、言葉が出てこず、再び黙り込んだ。

「あなたは本当に男性が苦手なのでしょうか?」

 アンバーはスバルの手を取るとそう尋ねた。

「勿論です。だから、父があんなふざけた張り紙を作ったのですわ」

「そうでしょうか? ……いや、敵に塩を送る様な真似はしたくない」

 アンバーはそう言うと、スバルの手の甲を自分の手で撫ぜた。その仕草はとても大切なものに触れるようで、スバルは何も言えず唯その光景を眺めていた。

「あなたに大切にされているものが羨ましい……」

 アンバーはスバルの手から視線を逸らさず、ポツリと呟いた。

「私は、あなたが考える様な人間ではありませんわ」

 スバルは悲しそうにそう言った。

「そうですね……あなたは私が考えている以上の方であると思っています」

「買い被らないで下さい。出会ってから少ししか経っていないあなたの様な方に褒められるたびに、辛くなるんです」

「出会ってから少し……か」

 スバルに聞こえない声でそう呟くと、アンバーはスバルの手を離し悲しそうな表情をみせた。

「えっ?」

「いえ。何でもありません。身分に押しつぶされているのはあなただけではありません。私もまた、リゲルの王子であるという桎梏から逃れられないのです」

「私は……この国を守りたいと思っています。その為には、あなたと婚姻を結ぶことが一番いいというのも分かっています。ですが――」

「姫様……私と賭けをしませんか?」

 アンバーはスバルの言葉を遮って、そう言った。

「……賭け?」

「ええ。もし、あなたの大切なものが、あなたと同様にあなたを愛するというのであれば、私はあなたを諦めます」

「如何いうことですか?」

 スバルは怪訝な顔をしながら尋ねた。

「簡単なことですよ。ホルダーがあなたにプロポーズをするのであれば、私は身を引かせていただきます。ですが……もし、ホルダーがこのまま何もしないというのであれば、私はあなたを妻に迎えます」

 アンバーはスバルの手を取ると、さっと手の甲に口付けをした。

 スバルは顔を真っ赤にしながら、何時もの平手打ちも忘れ、その光景を見ていた。

「これで、第一条件はクリアですよね?」

 アンバーはそう言うと、またにっこりと微笑み、スバルに背を向け長い廊下を歩き始めた。

 一人部屋の前に残されたスバルは、この時ばかりはホルダーのことを忘れ、自分の手の甲をぼんやりと見つめていた。

 

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