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ブルームーン kiss―手の上に尊敬のキスを―13
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  137

kiss―手の上に尊敬のキスを―13

この小説は「kiss?手の上に尊敬のキスを?」         10 11 12の続きになりますw

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『kiss?手の上に尊敬のキスを?13』

「籠の中の鳥には二種類いるの。一度大きな空を見て、その空に憧れを抱く鳥と、空の大きさに呑まれてしまって籠から出ることを怯えてしまう鳥。あなたは……どちらかしらね?



「はぁ……」

 スバルはホルダーのいない部屋で何度目か分からないため息をついた。
 アンバーの言っている意味が分からない。

 如何して彼――ホルダーが私にプロポーズをするというのだ。

 ホルダーに愛情を感じたことがないといえば嘘になる。アンバーにも言ったようにスバルにとってホルダーは大切なものであり唯一無二の存在であることに否定はしない。だが、それを恋なのかと問われると、正直返答に困ってしまうのだ。スバルにとってホルダーはそこにいることが当たり前であり、それこそ空気のような存在であった。それに対してアンバーは如何だろうか? 

 スバルは不意打ちとはいえ彼に口付けをされた自分の手の甲をぼんやりと見つめた。リゲルの王子であるという点を差し引いても彼は格好のいい部類に入るのであろう。きらめく様な銀髪や少年の様な笑顔には男嫌いのスバルですらときめくものを感じるのだから。

「私は……アンバー王子と結婚したほうがいいのかしら?」

 スバルはまたため息をついて呟いた。

 分からない。恋とは何なのか……。

「そもそも、ホルダーが如何して私にプロポーズするっていうのよ! 彼は私の側近でお父様の部下よ! そりゃ……ずっと一緒にいたけど……あー、もう!」

 スバルは一国の姫とは思えない格好でベッドへと寝転んだ。

「何ですか、だらしない!」

「そう、だらしないのよ……――! ってお母様!」

 スバルはコルの声が聞こえたので、寝転んだばかりのベッドから凄い勢いで起き上がった。

「仮にも一国の姫が、スカートがめくれるのも気にせずベッドに寝転ぶとは如何いうことですか?」

「それはそうなんだけど、お母様如何してここに?」

 スバルは何所を如何尋ねていいのか分からず、混乱する頭でそれだけ伝えた。

「母親が娘に会いに来ちゃいけないの?」

「そういうことを言ってるんじゃないわよ! 娘でもせめてノックぐらいしてくれたっていいじゃない」

 我ながら姫であるというのに世帯じみた愚痴を言っていると思う。そもそも、先ほどのアンバー王子といい、姫の部屋というのはそんなに簡単にウロウロとできるものであろうか?

 自分の国ながらスバルはアルデバランの警備体制が不安になってきた。

「あら! ノックならしたわよ」

「だったら返事を待ってよ!」

「返事がないから、入ってみるとあなたが百面相をしてたから」

「もう!」

 スバルは風船のように頬を膨らましコルを睨んでみたが、コルが怯む様子はまるでなかった。

「何なら、ノックからやり直す?」

「もういいわよ! それで? 如何かしたの?」

 スバルは投げやりになりながらそう尋ねた。

「いえね、今日ホルダーがタウリのところに来たのよ」

「お父様のところに?」

「ええ。あなたの側近から外れたいんですって」

 コルは世間話でもするようにそう言った。

「如何して! だってホルダーは――」

「おかしい話じゃないでしょ? ホルダーが側近だったのは、ここに来たばかりの頃幼くて他に仕事がなかったからよ。だから、あなたの遊び相手兼側近っていう立場に置いたのだもの。それとも何? ホルダーが二十二歳になった今でもあなたの側近でなければいけないわけでもあるの?」

「それは……」

 スバルは言葉に詰まった。

 そう言われてしまえば、そうなのだが、言葉にできない感情が胸の中を駆け巡っているのだ。

「ねぇ、スバル……。私は十七でこの国に嫁いだわ。私もそれなりに立場というものがあったから周りには止められたけど、それでも押し切ってここに来たの」

 コルは黙り込んだスバルを見て、そう話し始めた。

「お母様は他の国の生まれだものね」

 スバルは母、コルが生まれた国であるカペラを思い浮かべながらそう言った。

「えぇ。カペラの第五王女、それが私の身分だった。婚姻を結ぶ前にタウリと会ったのはたった一度よ」

「一度だけ?」

 スバルは目を丸くしてそう尋ねた。

「驚くのも無理はないわ。私だって無茶なことをしたと思ったもの。でもね、一度だって後悔はしたことがないわ」

「如何してカペラを捨ててアルデバランにやってきたの?」

「簡単よ。私はタウリが好きだから。だから、アルデバランに来てでも、あの人について行きたかったの」

「でも、一度しか会ったこと無かったんでしょ?」

「そうね……。正直賭けだったわ。でも……初めてあった時あの人は私に厳しさを与えてくれたから」

「厳しさ?」

 スバルが小首を傾げながら尋ねると、コルは続けて、

「カペルで第五王女として育った私はお姉様の様に国の跡を継ぐという役割も、世間の風にあたる辛さも知らずに育ったの。だから、他の国がどんな様子で、どんな人がいるかなんて全く知らなかった……。彼はね、そんな籠の中の鳥だった私に厳しさと一緒に空を見せてくれたのよ」

「空……」

「ええ、視界いっぱいに広がる様な空よ。だから、一度しか会ったことは無かったけど、如何してもあの人についていきたいと思えたの」

「お母様って結構ロマンチストよね」

 スバルは笑いながら母の顔を見た。コルもまたスバルの顔を見つめ、優しく頭を何故ながら微笑んだ。

「そうね。……スバル知ってる? 籠の中にいる鳥にも二種類いることを」

「えっ?」

「一度大きな空を見て、その空に憧れを抱く鳥と、空の大きさに呑まれてしまって籠から出ることを怯えてしまう鳥」

「お母様は前者ね」

「あなたは、どちらかしらね?」

 コルの問いに、スバルは黙り込んだ。

「飛び立てない鳥に一つ教えてあげる。籠の鍵が何時までも開いてると思ったら大間違いよ」

 コルはスバルの目を見つめながらそう言うと、ヒラヒラと手を振って部屋を出て行ってしまった。

 スバルはそんなコルを苦笑いしながら見送ると、一人考えた。

 ――私の空は一体何所にあるのかしら?

 

「あなたも飛び立てない鳥ね」

 コルはタウリの部屋に入るとタウリの隣の机で雑務をこなしていたホルダーにそう言った。
「何のことですか?」

 ホルダーは書類から目を逸らしコルを見つめた。

「あなたはこのまま王の補佐にでもなるつもり?」

「それは王様が決めることですが……」

「そうね……。でも、あの人はあなたがそう望めば、そうするでしょうね」

 コルは少し不機嫌そうな声でそう言った。実際彼女の眉間には皺が見られる。

「この紙を出そうとは思っています」

 ホルダーはそう言うと自分の署名と捺印の押された転任届を見つめた。

「出して如何するの?」

「姫様のお側を離れるのです」

「あの子がそれを望んでいなくても?」

「……分かりません」

 ホルダーは転任届を見つめながら呟く。

「ねぇ、ホルダー賭けをしない?」

「はい?」

 沈黙を破るように突拍子もないことを言い出した王妃をホルダーは怪訝そうに見つめた。

「簡単な賭けよ。あなたにはスバルの側を離れてもらうわ。あなたの望み通りね。但し、期間は三日。それもスバルに会えないところに行ってもらうわ」

「如何いうことですか?」

「仕事は……そうね、新しく結ぶ条約の件でリゲルに誰か出張に行ってもらわなければならなかったのよ。それでいいわ」

「出張は別にいいのですが、それが何か?」

 コルの的を得ない話にホルダーは再び尋ねた。

「もし、その三日間あなたがスバルと離れていられたら、スバルに会いたいと思って行動しなければあなたの勝ち。あなたの願い通り転任届けも受理するし、行きたいところに行かせてあげる。でも、もしスバルに会いたくて我慢できなくなったら……私の勝ちよ」
 コルはニッコリと笑ってホルダーを見た。その笑顔がスバルにそっくりでホルダーは少し顔を赤らめた。

「もし、王妃様が勝たれたら如何なさるんですか?」

「そうね……私のお願いを聞いてもらうわ」

 コルは面白そうにホルダーを見つめると、ホルダーの手から転任届を奪い取った。

「それまでこれは預からせて頂戴ね」

 転任届をヒラヒラとさせながら自分を見つめるコルにホルダーは心なしか頭が痛くなったような気がした。

 

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