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ブルームーン リクエスト作品4?2
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  172

リクエスト作品4?2

こちらはリクエスト作品4の第二段の小説になりますw
没にしようかかなり悩んだのですが、折角書いたので出しちゃいます^^;

【冷めた珈琲と蛍光灯1】


「明るい……か?」

 外からも見える部屋の明かりを眺めながら、俺は呟いた。

 丑三つ時などとおにすぎ、幽霊もそろそろ撤退するような今の時間は、空も明るくなってきていた。両隣の部屋の電気は切れており、自分の家の窓だけがそんな中で浮かび上がってくるようだった。

 ガチャ

 なるべく音をたてないようにドアを開く。相変わらず狭い部屋が目に入った。

 入ってすぐの台所のテーブルには彼女がうつ伏せに眠っている。

 ……やっぱり待ってたのか。
 申し訳ない気持ちになりながら、彼女の横にあるカップに半分ほど入ったままの冷めた珈琲を眺めた。

「んー? 帰ってたの?」

 彼女は目を擦りながら身体を起こす。

「起きてなくていいって言ったのに……」

 俺は渋い顔をしながら彼女にそう言った。そんな言葉を伝えたい訳ではないのに、いつも口から出る言葉はこんなもので、愛情のカケラもないと自分でも感じる。

「でも、帰ってきてお腹すいてたら可哀想だし……」

「お茶付けくらい自分で作れるよ」

 俺はネクタイを緩めながら片手間にそう言った。

 その言葉を聞いた彼女の顔が少し歪む。
 あっしまった、と思ったときにはもう遅く、彼女の目からはポロリと涙が零れた。

「泣くことないだろ!」
 慌ててそう言うが、彼女は首を振るだけで何も言おうとはしない。

 何時からだっただろう。彼女とこんなにもコミュニケーションが取りずらくなったのは。
 同棲し始めて、初めての朝帰り。彼女は今日のように俺を待っていた。
 ついたままの蛍光灯と、決して眠るまいと彼女が入れたであろう珈琲が妙に愛おしくて、徐に彼女を抱きしめた。
 最初はそこにあるのは愛情だけだったのだ。それが、何時しか早く帰らなければならない義務のようなものに変わり、プレッシャーへと変わった。
 何回目かの朝帰りの時に、「もう待たなくていい」俺はそう言った。彼女は目をパチパチとさせながら、ただ「そう」と呟いた。それでもそのニ、三日後に仕事を片付けて朝に帰ると彼女は台所で待っていたのだ。

 最初は本当に仕事だった。書類の作成が終わらなくて、朝までパソコンとにらめっこを繰り返していたのだ。しかし、それは次第に上司と共に行く接待へと変わり、同僚といく飲み会に変わり、俺が帰るのは彼女のいる家ではなく、親しくもない女の子のいるホテルになった。
 それでも待っている彼女に半ば自棄になっている気がする。
 待たなくていいっていってるのに、あいつは勝手に待っているんだ。
 何時しか俺の中ではそんな風な言い訳が出来上がっていた。

「……もう、必要ないの?」

 彼女はか細い声でそう言った。

「あぁ、必要ないよ」

 俺はゆっくりとそう言った。そうだ、何時だって待っていてくれなんて一言も言っていない。待っていたのはお前の勝手だろ?

「……そう。私は必要ないのね」

 彼女はゆっくりと立ち上がると悲しそうに微笑んで見せた。その言葉と仕草に俺の頭の中が一瞬壊れたパソコンのようにフリーズしてしまった。

「おい! 誰もそんなこと言ってないだろ!」

 俺は慌てて声を荒げる。頭の中は真っ白で、何も考えられない。
「でも、私がいても意味ないでしょ?」

「そんな訳――」

「本当はね、分かってた。待ってなくていいって言われた時に、もう私はここにいなくていいんだってことが。でもね、私が勝手に待ってたの。あなたが、帰ってきた時にお帰りって言ってあげたくて」

「おいっ」

「ごめんね。ここはあなたの家だもの。あなたが居辛くなることなんてないのよ……ごめ……ねっ――」

 最後の方は涙で消されてしまった彼女の謝罪が妙に心に痛くて、俺は彼女を抱きしめた。

 頭は相変わらずフリーズしたままで、真剣に誰かが再起動させてくれることを望んだ。

「中途半端な優しさならいらないの。待ってなくていいじゃなくて、私のこといらないって言ってくれたらよかったのに……」

「違う! 違うんだ……」

 俺は何が言いたいんだ? 下手に口を動かすと会話が更にこじれそうで、言葉が思いつかなかった。

 無音の時間が幾分か過ぎ、彼女が俺の胸を押し返すのが分かった。

 ほら、早く言わなければ……早く……

 
 

「……違う!」

 そう叫んだところで俺の目に映ったのは彼女でもなんでもなく、いつもの俺の部屋だった。

「――夢か……」

 何時しか寝てしまっていたらしい。汗をかいていたのか妙にシャツが体に張り付く。それにしても、この夢は何回目だろう。数えるのも嫌になってくる。

 あの日確かに彼女は出て行ったのに、俺の夢には度々現れる。その度に俺は同じことを繰り返すのだ。如何してあの時、唯一言「愛してる」と言えなかったのだろう。

 伝えたいのに、言葉はいつも出てこなくて、俺は苛立ちから拳で膝を叩いた。

 後悔はいつも俺を責め立てる。その所為かこんな朝を迎えるたびに俺は彼女を思い出す。

 

 空はぼんやりと明るくて、時間はもう朝。

 俺の隣りには冷めた珈琲、部屋は蛍光灯に照らされていた。

 まるで、あの時の彼女が過ごしていた空間を再現するかのように。

 

 

 

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この記事のコメント

No.494 こっそりと
 おはつにおじゃまいたします。

 Ebookersのほうで、いつもお世話になっちょります。八本足ですじゃ。

 お邪魔したついでに、ちょと感想書き込みなど。

 いつまでたっても自分を責め続ける、過去のあやまち。時折、早朝のまどろみの中で、心に刺さったトゲが痛み出すその感覚が、読んでいてたいへん実感のこもった感じで伝わってきました。

 脳のどこかで「間違っている」とわかっていながらも、正しい行動が出来ずに誤った道をすすんでしまい、後になって延々と後悔しつづけること、ありますよなあ。

 また、ちょこちょこのぞかせていただきますじゃよ~(^^
2008-02-22 Fri 22:51 | URL | はっぽんあし #3/2tU3w2[ 内容変更]

No.497 はっぽんあしさんへ
わぁ~!
いらっしゃいませw

こちらこそ八本足さんにはお世話になっておりますw

リクエストの「冷めた珈琲と蛍光灯」というお題で思いついた雪のイメージが早朝だったんですよ^^

過去の過ちはどんなに頑張っても変える事はできません。
雪なんかはあの時こうしていたら、ああしていたらと後悔なんかもいっぱいです^^;
その所為か、この男の人の心情は割合書きやすかったですi-229

後悔先立たずと言いますけど、後悔しない人なんていませんよねi-278

いつでもいらっしゃって下さいw
2008-02-23 Sat 00:08 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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