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ブルームーン リクエスト作品4?3
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  173

リクエスト作品4?3

こちらはリクエスト作品4の小説二本目ですw
受験をテーマに一本^^

【冷めた珈琲と蛍光灯2】


 季節は冬真っ只中で受験も追い込みの時期に来ていた。

 口から出るのは英語や歴史の語呂合わせに、わけの分からない化学記号の羅列。

 連日深夜まで私の部屋からは明々と蛍光灯の灯りが見える。泥棒ならば、真っ先に遠慮したい部屋であるだろう。

「珈琲入れようか?」

 三つ年上の姉が勉強をする私にそう尋ねた。

「うーん、有難う」

 そう答えたくせに、手元の教科書に夢中になって、手付かずの珈琲はゆっくりと冷えていく。

 姉はそんな私の背中を見つめているだけで、何も言おうとはしなかった。

「何?」

「ん? 何でもないよ」

 それだけの会話を交わすと、部屋にはまた沈黙の時間が流れる。

 背中に感じる視線に気付かない振りをして、一心不乱にシャーペンを走らせた。姉には悪いが、正直私は焦っているのだ。

 受験が近づくに従って、周りの子達の成績は上がり、何時しか自分より勉強のできなかった子達にまで抜かされていた。焦ってはいけないと何度自分に言い聞かせても、返ってくる模試の成績を見ると焦らずにはいられなかった。要領が悪いとか、やり方が悪いなんて言われても、今更自分のやり方を変えるには時間がなさ過ぎた。母からは無理しなくてもいけるところでいいと言われるが、プライドの高い私はそれを受け入れることができず、自分でも無謀と言える大学を受けることに決めていた。先生にも母にも反対されて、それでもそれを押し切って受けるのだ。なんとしてでも受からなければ。何時しか自分で自分にかけるプレッシャーは相当なものになっていた。

 暫くして私は手を止めて時計を覗き込んだ。少し前まで起きていた姉は何時しか机で静かな寝息をたてている。時計は真夜中とも呼べる時間を指しており、私は疲れから肩をぐるりとまわした。肩の力がぬける感覚が気持ちよく、少し冷えた部屋の空気を吸い込んでみた。肺に入る空気が不意に自分を現実に戻すようで奇妙な感覚を覚える。

 その時、ふと先ほど姉が淹れてくれた珈琲が目についた。

「冷たくなっちゃったか……」

 申し訳ない気持ちになりながら、ブラックのままの珈琲を覗き込んだ。

 いつも姉が淹れてくれる珈琲の味は決っていた。グァテマラのジニーブルボンを使った珈琲は姉のお気に入りで、私に入れてくれるものはそれに袋の砂糖が一本加えられていた。インスタントではない姉の珈琲がいつも好きで、受験勉強が今ほど忙しくない時、よく話しながら飲んだものだ。

 もしかすると、姉は私に何か話したいことがあったのかも知れない。姉の珈琲カップにも手をつけずにそのまま冷めた珈琲が残っていた。

「これで受験落ちたら申し訳ないな」

 私はふっと笑いながら、冷めた珈琲に口をつけた。

「……甘い?」

 口に含んだ瞬間に広がる味が何時もより甘く優しい。

「砂糖が多いのかな?」

 何となく気になってゴミ箱を覗き込むと、そこにはやはり砂糖の袋のゴミが二本。姉の珈琲はいつもブラックで砂糖は入っていなかった。それに、あのしっかり者の姉のことだ。間違って砂糖を多く入れるなんてことはないだろう。
――疲れてるときは甘いものが欲しいでしょ?

 ぼんやりと考え込んでいると、姉の昔よく聞いた口癖を思い出した。ゴミ箱に横たわる砂糖の袋からいたずらっ子のような姉の笑い顔が見えた気がした。

 ……そういうことか。

「ほんと、これで落ちたら申し訳ないよ……」

 私は冷めた珈琲に再び口をつけ、一気に喉に流し込むと、シャーペンを握りなおした。

 受験まであと少し。

 部屋には止まっていたシャーペンの音がカリカリと響く。

 終わったらまた姉ちゃんと珈琲を飲みながら話でもするかな。

 私の部屋は窓の外が明るくなっても尚蛍光灯の灯りがともっていた。

 

 

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この記事のコメント

No.484
今の、自伝小説に思えましたが、学生さんの、気持ちと、姉妹の関係が、良く、表現されていました。リクエストは難しいですよね。さらりと、かける才能、、羨ましいです。お元気にて!
2008-02-19 Tue 16:51 | URL | 荒野鷹虎 #-[ 内容変更]

No.486
すばらしい作品を三作もありがとうございます^^
人と人とのつながり、思いやりなど、、小説二作を読ませていただいて、伝わってくるものがありました。
一人の事だと思い込みすぎると、ほんとに一人になってしまう。そして、一人じゃないから頑張れる。
また何かお題が考え付いたらリクエストしますw
2008-02-19 Tue 21:56 | URL | 火酒 #-[ 内容変更]

No.487 荒野鷹虎さんへ
受験シーズンなのでこのテーマで、というリクエストを火酒さんより頂いてたので、二本目の小説は受験をテーマにして見ました。
何時もよりも少し甘めの珈琲は雪が以前ある人にやってもらって凄く嬉しかったんですよ^^
これをやるにはその人のこと、しっかりと見ていなければなりませんし、その人以上にその人の気持ちを分かってなければいけませんからw
雪もそんな人になれるといいなっと思ってますi-278



2008-02-19 Tue 22:00 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

No.489 火酒さんへ
素敵なお題有難うございましたw
調子にのっていっぱい書いちゃいましたi-278
一本目が暗めの話になっちゃったんで、二本目に明るい話(?)をと思いまして^^

はいw
いつでもお題お待ちしてます^^
2008-02-19 Tue 22:35 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

No.495 つづけて感想など。
 冬の夜の、暖かな姉妹の様子を楽しみながら読ませていただきました。

 たぶん、この姉妹は何年か経った後、この夜のことを思い出しては、懐かしく語り合うのでしょうなあ(^^
2008-02-22 Fri 22:56 | URL | はっぽんあし #3/2tU3w2[ 内容変更]

No.498 はっぽんあしさんへ
こんなお姉さんというか、こんな風に支えになってくれる人が身近にいればいいなぁと思いながら書きました。
小さな優しさって、後になっても凄く凄く嬉しいものなんですよね^^

そうですねi-278
何年かたった後に、あんなことがあったね。あの時は嬉しかったなぁ~と話すんでしょうね^^

ではでは、2つもコメントを残してくださってありがとうございましたw
2008-02-23 Sat 00:18 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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