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ブルームーン 2000HITリクエスト作品2
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  206

2000HITリクエスト作品2

リクエストのお題で「桜の季節」を頂いたので短編小説を一本書いてみました。
最初に考えていたものと少しずれてしまって、こんな風になってしまいました^^;
如何しようか悩んだんですけど、折角書いたんでUPしてみますw

お題:桜の季節

 桜の花が咲き乱れ、辺りには騒がしいほどの笑い声が聞こえる。昼前からはじめた宴会はそろそろ酔いもまわってきて、ペースは徐々に落ちていた。

「ねぇ知ってる?」

 女は隣りでまどろんでいた男にそっと呼びかけた。

「何が?」

 男は少し疎ましそうに目を開くと尋ねた。

「桜の木の下には死体が埋まってるのよ。これは信じていいことなの」

 女は少し神妙な声で言ったが、男はなんだというようにまた目を閉じた。

「ねぇ、ちょっと!」

「聞いてるよ。一体如何したんだ? 急に小説のパロディなんて持ち出して」

「あら、知ってたの?」

「梶井基次郎くらい知ってるよ。君の影響で俺だって本くらい読むさ」

 男は少し得意げに笑った。

「あら、あなたみたいな人は梶井基次郎って言われても檸檬のタイトルくらいしか出てこないのかと思ってた」

 女の皮肉に男は少し顔を顰めると、

「……昔のことさ」

 と言った。実際、過去に似たようなことがあったのだ。

「本当に、この桜の下に死体が埋まってたら……」

「止めてくれよ。気味が悪い!」

「例え話よ」

 女は本気で嫌そうな顔をする男を見ながら少し笑うと、続けて、

「でも、そうかしら?」

「えっ?」

「もし……よ? 自分が死んじゃって、あんな風に冷たい石の中に入れられちゃうなら、いっそ桜の木に埋めてもらった方がロマンチックだと思わない?」

「俺は墓石の中でいいや」

「もう!」

 女は男の回答に気分を害した風でもなくふっと笑った。

 桜の木は風に吹かれてその花びらをふわふわと落とす。

「でもさ……」

「ん?」

 急に口を開いた男を女は不思議そうに眺めながら続きを待つ。

「何か似合いそうだなっと思って」

「似合いそう?」

「ん。お前さ、桜の木似合いそうだよな?」

「あら、ありがとう」

 女は軽い口調でそう言うとまた視線を桜の木に移した。

「でも、こんな綺麗な木が似合うっていわれると嬉しい反面気後れしちゃうわ」

 そんな女に対して男はクスリと笑うと、

「それこそ、梶井基次郎だな」

 と言った。

「えっ? あぁ、そうね。もし、この桜の木に死体が埋まっているならば、私はこの桜につりあうって言われても気にならないもの」

 女はまた笑いながら、買ってきたビールのプルトップに手をかけると、

「今こそ私は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑めそうな気がする」

 そういいながら口をつけた。男は桜の花びらと同じ色に染まる彼女の頬を見ながらふっと目を逸らす。

 ――本当に桜が良く似合う。

「なぁ」

「何? 飲みたい?」

 女は男に飲みさしのビールの缶を差し出す。男はその仕草に無言で首を横に振ると、

「埋めてやってもいいよ」

「えっ?」

「お前が死んだら……さ」

「まさか!」

 女はいい加減アルコールもまわっているのか、面白そうにケラケラと笑う。

「本当だって!」

 男は笑われたことに少しむっとした表情を見せると語尾を強めた。

「アハハハー。でも、ここならお花を供えてもらわなくても寂しくないかもね。お願いしようかしら」

 女は男を覗き込むとまた笑った。

「あぁ、埋めてやるよ。だからさ……」

「ん?」

「だから、お前が死ぬまで俺と一緒にいろよな」

 男はそう言うと、女の手からビールを取り、ごくりと飲み込んだ。体の中を冷めかけていたアルコールが巡って、顔に血が集まるような気がする。それが恥ずかしさからなのかなんなのか男には見分けがつかなかった。

 女はそんな男をぼんやりと見つめると、

「約束ね」

 と小さな声で呟いた。

「……じゃあ、生きてるうちは毎年一緒に桜を見ましょうか?」

 女は、にっと笑いながら男の顔を再び覗きこむ。

 男は中身の殆どなくなったビールの缶をポロリと落とすと、暫く固まった後ようやく、

「……あぁ」

 と頷いた。

 桜は相変わらず風に揺られてふわふわと花びらを落としていた。

 


ホラーを書いてみようかと思ってたのですが……^^;
恋愛ショートストーリーのなってしまいました。
ちなみに話の中に出てくる、梶井基次郎さんの『櫻の樹の下には』はこちらをどうぞw
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この記事のコメント

No.675
まいど~
桜って日本って感じと春って感じが凄くピンクや淡い色で、素敵ですよね~☆
雪さんの素敵な小説のように桜の樹の下でお酒でも彼女と飲めたら、ほっぺも桜色って感じで良いですね~
桜の樹の下は、私、怖い思い出も有りますが、雪さん怖がらせたくないですから書きませんが…(笑)
まぁ兎にも角にも、阪神ぶっちぎり優勝もアリエール出だしで、桜満開ですね!
ではまた
2008-04-05 Sat 23:50 | URL | ヒポユキ #-[ 内容変更]

No.677 ヒポユキさんへ
まいどどうもです^^
桜はほんと素敵ですよねw
今通っている教習所までの道に桜が咲いた公園があるんですけど、いつもその道だけ少しゆっくり進むことにしています。
お花見は今の雪の願望が含まれております(笑)
桜を見るたびに「あー花見がしたい!」と常日ごろ考えているもので^^;

桜の下の怖い思い出……
怖いもの見たさで気になります^^;
雪は昔葉桜の下に大量の毛虫が居て物凄く吃驚した思い出が……
虫嫌いではないんですが、あの時はさすがに気持ち悪かったですi-230
阪神は本当に今桜満開な感じですね^^
このまま突っ走ってもらいたいですw
2008-04-06 Sun 00:05 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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