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ブルームーン Les Terre du Sud 2005
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  227

Les Terre du Sud 2005

 私の旦那は浮気をしている。

 若いホステスから、何所から連れて来たかわからない中年の女まで、そのバリエーションは幅広い。

 浮気なんてするぐらいなら如何して結婚なんてしたのかしら?

 家事をして欲しかったから……?

 出世の為には結婚している事が大事だから……?

 全く、男の人の考える事は少しずれてるわ。

 女は首を振ると、ワイングラス一杯にLes Terre du Sudテール・ド・シュド)の2005年を注いだ。

 このロゼのワインは最近、女のお気に入りだった。

 旦那が帰ってこない夜は必ずこのロゼで一杯やるのだ。

 果実の味わいを感じながらこのロゼを飲んでいるといつのまにか心が落ち着いてくるのだ。

 女はグラスを少し持ち上げて、グラスを満たすロゼの色合いを見た。

 薄いピンク色で、それは儚い青春の恋のようだった。

 女も歳相応にいろんな恋はしてきたつもりだ。

Bourgogne Pinot Noir(ブルゴーニュ・ピノ・ノアール)の赤ワインのような身体を熱くさせる、燃えるような恋だってしてきた。

逆に、William Fevre Chablis(ウィリアム・フェーヴル・シャブリ)の白ワインのような爽やかさを感じながら苦味やこくのある複雑な恋だってしてきた。

それでも、このロゼにあうような儚い、若いうちにしかできない夢のような恋愛はしたことがないと感じた。

女は昔から少しませた子供だった。

初体験は中学生で済ませて、高校生の頃から彼氏を切らしたことがなかった。

大学生になるとろくに学校にも行かずバイトに精を出した。

自給八百五十円。始めてもらった給料の少なさに愕然とした。

あんなに齷齪働いたところで得るものは月に数万円のお金。

そう思った時、女は夜の世界へと入っていった。

一日数時間で月に得たお金は十万円単位のものだった。

お酒を飲んで愛想笑をして、金持ちのおっさんの相手をする。

仕事はそれだけの事だった。

若くて、女であればそれでいい。

そこはそんな世界だった。

今の旦那も結局、店のお客さんである。

向こうが一方的に惚れ込んで、プロポーズをしてきた。

丁度その時大学の四回生で、就職も決まってなかったから二つ返事でOKをだした。

それから十数年。

よく続いたものだ。

旦那と私は恋をしなかった。

いつまでたっても、旦那は客であり、私はホステスである。

その関係は変わる事がなかった。

いつしか旦那は浮気を始め家に寄り付かなくなった。

そして、旦那しか客のいない私だけの店はいつしか一人で酒を飲む部屋へと変わっていった。

最初はビールだった。缶ビールを机一杯に空き缶が広がるほど飲んだ。

アルコール中毒に近い状態になったこともある。

ワインに出会ったのはそんな時だった。

大学時代の友達が電話でこう言ったのだ。

「あなたのところはお金があるんだから、安いビールで身体を壊してないで高いワインでも飲みなさい」

その時は何を馬鹿なことをと言って笑ったが、後になって無性にワインが飲みたくなった。

それなりに値段の張るワインだって飲んだが、最後に行き着いたのはLes Terre du Sud2005年だった。

値段は二千円足らず。

そのワインに出会った時、はっきりと道を間違った事を悟った。

私はまだ、人生のLes Terre du Sudを味わってない。

そう気付いた。

その時に買った三本のボトルも、もうじき空になる。

女は最後の一本を飲み干すと、徐に立ち上がった。

大きな引き出しには一枚の紙が入れられていた。

『離婚届』

女はほろ酔いの身体をしゃきっとさせると、判子を押した。

これでいい……。

女は寝室から一つの鞄を取り出す。

この家で必要なものは自分の身とこの鞄だけだ。

女は机に一枚のメモ用紙を置くと、鞄とワインの栓を手に持って家を出た。

鍵は郵便ポストから家の中へと放り込む。

ワインの栓からは、消える事のないLes Terre du Sudの香りがしていた。

 

『人生のLes Terre du Sudを探しに行きます。さようなら

 

部屋にはそう書かれたメモ用紙がワインのビンの下に置かれていた。

 

 

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この記事のコメント

No.759
まいど~
何か決意を行動する時に酒の勢いを借りてやる気持ち分かりますよ~私はほとんど酒は飲まない男ですがw
酔わせて欲しい気持ちを満たしてくれる人を探しに旅に出るみたいな離婚届、なかなか深い味わいがありますね~

私は今はボウリングの後カラオケボックスの抹茶サワーを2ヶ月に一度位二杯飲むのが、唯一酒の行事となってる位で、今日の法事も運転手で札幌や苫小牧を駆け巡り飲めませんでした~

まぁ兎にも角にも、阪神負けましたが、私の神オリックスのラロッカ様が一軍復帰でタイムリーを打ったみたいで嬉しかったです☆
ではまた
2008-04-29 Tue 22:42 | URL | ヒポユキ #-[ 内容変更]

No.761
[浮気」をテーマにした作品は雪さんの反面なのか、魅惑的な文章です。意外性も感じます。創作は自己の内面を反映しなければ書けないものと思います。雪さんの{女}の一面を垣間見るようで非常に興味があります。!
今後の展開を楽しみにしていますよ。^^
2008-04-30 Wed 16:29 | URL | 荒野鷹虎 #-[ 内容変更]

No.762 はじめまして
こんばんは。森野帽子といいます。
ファンタジー小説を主に書いております。

本当に大学生さん?って感じの、
実に大人で鋭い感性ですね。
情景を浮かべながら一気に読んでしまいましたよ。

これから宜しくーですケロ。v-535
2008-04-30 Wed 20:59 | URL | 森野帽子 #GxAO5jdM[ 内容変更]

No.763 感想
今回小説読ませていただきましたv
少し生意気言いますが、気にしないでスルーして下さい。文章自体は正直まだ少し未熟な感じがします。まだ読者を引き込めるまでには達していない表現です。
しかし、この小説には小米雪さんの感性の鋭さを感じることができます。このまま小説を書き続けていけばもっといい作品が出来上がると思います。めげずに頑張って下さい。
2008-04-30 Wed 21:21 | URL | キマグレパンダ #Bnxa9UrI[ 内容変更]

お返事遅れちゃって申し訳ないです(>_<)
用事がやっとこさ片付くことができましたw

ヒポユキさんへ
まいど~^^
お酒には何か不思議な力がありますよね^^
雪も考え事をしたい時に一人で飲むのが好きですw
人生において味わっていない美酒を探す旅というところでしょうかw
この話は自分の中でも割合気に行っていますw

ボーリングいいですねー^^
雪は最近やってないですi-229
運転すると呑んじゃ駄目ですからねー^^;
ご苦労様ですw

ではでは、いつもコメント有難うございます&お返事遅れてすみませんでしたi-229


荒野鷹虎さんへ
雪の反面なんですかねー。何所かこんな恋愛感に憧れがあるのかもしれません^^;
そうですねー。創作は自分の考え方や心情が凄くよく出ますもんねー。
雪の女の一面ですか~? まだまだですよi-278
いい女になることを目指します(笑)
ではでは、コメント有難うございましたw&お返事遅れてすみません!!


森野帽子さんへ
初めましてw ご訪問&コメント有難うございますw
ゴールデンウィークの間にファンタジー小説読みに行かせてもらいますね^^

この話は自分でも少し背伸びしたような作品になってる気がします。自分の中でこんな風だとイメージする大人の恋愛の世界観みたいなものを出してみました。

はいw これからよろしくお願いしますねー^^


キマグレパンダさんへ
小説読んでいただきまして有難うございますw
鋭いご指摘有難うございますw
大歓迎です(笑)
文章の勉強をしたこと無いので、やっぱり未熟で難しいです^^;
特に短編なんかは早いやつだと勢いで30分足らずで書いちゃいますんで、ありえない文章になってることも……(コラッ!)
唯、書くことは好きなんで、書き続けていこうとは思っていますw
ではでは、コメント有難うございました^^
2008-05-02 Fri 23:14 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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