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ブルームーン 私の帰る場所
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  228

私の帰る場所

浮気は文化だ!

芸能人の誰かが言ってたっけ?

何を馬鹿なことを!

私はその浮気のために全てを捨てようとしているのに。

 

 

 

彼に出会ったのは半年前の冬だった。

寒い手を擦りながらようやくたどり着いた喫茶店に入ったが席が一杯で、知らない男の人と相席する羽目になった。

それが彼だった。

出会いは別に珍しくもない。

私は格段彼に興味を示したわけでもないし、温かい紅茶を一杯飲めれば喫茶店から出て行くつもりだった。

目の前に紅茶が置かれる。

私は急いでそれを飲もうとしたが、正面から視線を感じた。

「あの……何か?」

 私は人の姿をじっと見つめる彼を訝しげに見た。

「あっ! すみません! 唯、よほど寒かったんだろうなと思いまして」

 彼はそれだけ言うと鞄をごそごそとやりだした。

 新型の暖房機でも売りつけられるのかしら?

 冗談じゃない……。

 私はもう一度、紅茶のカップを持とうとした。

「あっちょっと待って!」

 彼は慌てた様子でそれを止めた。

 何だって言うの? 紅茶が冷めちゃうじゃない!

 私は苛々して彼を睨み付けたが、彼はにっこりと笑うとブランデーのビンを取り出した。

「これこれ! 寒いなら、紅茶にブランデー入れたらいいですよ。香りが尽くし、それに温まります!」

 彼はそう言うと私の紅茶にブランデーを入れた。

 私が「あっ!」と思った時にはもう遅く、ブランデーは湯気の出る紅茶へと溶けていった。

私はしょうがなくその紅茶に口をつけた。

「美味しい……」

 私は思わずそう言ってしまった。

「でしょ?」

 彼は嬉しそうに私を見た。

 それが恋の始まり。

 それから私は週に二日ぐらいの割合で彼に会っていた。

 旦那はいつも帰りが遅く、会話もほとんどない。

 浮気をしている罪悪感はなかった。

 最初はビクビクしていたが、いつの間にか向こうにも彼女がいるんだからと勝手な想像で割り切っていた。

「なぁ……、一緒に暮らさないか?」

 彼が私にそう言ったのは、春の事だった。

「えっ?」

「俺と一緒にさ……」

 彼は照れているのか視線を合わさないようにしてそう言った。

「でも……」

「結婚しているのは知ってる。でも、君だってこんな状態辛いだろ?」

彼は低い声でそう言った。

 正直、彼がそう言ってくれたことは嬉しかった。

 でも……いくらなんでも、旦那のいる身である。

 十代の少女のように満面の笑みを浮かべて頷く事はできなかった。

「考えといてよ……」

 彼はそれだけ言った。

 それから二週間。答えは出た。

 私は家に鍵をかけると、駅に向かって歩き出した。

 電車に乗って何所か遠くで二人で暮らそう。

 彼はそう言った。

 念のため貯金通帳は持ってきていた。

 やはり、あまりに惨めな生活はしたくない。

 我侭なのは分かっているが、これは旦那に対する復讐でもあった。

 あなたがもう少しかまってくれていたらこんな事はしなかった。

 駅のホームに着いた。

 私は彼の顔を見つけた。

 驚かせてやろうと、彼の背後に回る。

 チャラーラー チャラーラー

 聞いたことのあるメロディが、彼のポケットから鳴り出した。

 携帯電話だ。

「はい。ええ、大丈夫です。まるで怪しんでいません。ええ、通帳も持ってくるように言いましたよ。大丈夫です。旦那に浮気をされるような主婦なんて、こっちの事疑ったりしませんよ。ええ、いい鴨ですね」

 彼は電話でそう言った。

 私は頭が真っ白になった。

 今のはあの彼の言葉なの?

 信じられなかった。信じたくなかった。

 気がついたら私は泣きながらいつもの家へ続く道を歩いていた。

 情けない……。一度は捨てた家なのに、自分には戻る場所がここしかないなんて。

 涙は一つずつポロポロと流れた。

 馬鹿みたいね。若い女の子じゃあるまいし、男に騙されて泣くなんて。

ツゥルルー ツゥルルー 

自分の鞄の中で携帯電話が鳴り出した。

きっと中々来ない私に彼が痺れを切らしてかけてきたに違いない。

やっぱり……。

私は携帯電話の液晶に彼の名前を見てそう呟いた。

無言で電源のボタンを押す。

ツゥルルー ツゥルルー

彼からの電話を切って直ぐにまた携帯電話が鳴り出した。

私は苛々しながら電話に出た。

どうせ彼だ。

なんて嘘を吐いてやろうか? それとも、彼の嘘を見抜いたことを自慢げに語ってやろうか?

「はい……」

 結局私はその二文字しか言わなかった。

 いや、言えなかった。

 何を言っても惨めになるのは自分だって分かってたから。

「俺だけど? 如何した? 不機嫌な声出して」

 声の主は旦那だった。

 私は驚いた。携帯に電話なんてかけてきたことない人なのに。

「お前今何所にいるんだ? あの手紙は何なんだ?」

 旦那の弱々しい声を聞いて、私は自分が置いてきた手紙を思い出した。

 手紙には唯出て行くことだけを示しておいた。

 早く帰った旦那はさぞかし驚いただろう。

「何とか言ってくれ! 何所に行くんだ? 迎えに行くから! 教えてくれ!」

 旦那の声は悲鳴に近いものだった。

 私はくすっと笑うと、

「今日何が食べたい?」

 そう尋ねた。

旦那は、

「……何もいらない。唯、お前だけは帰ってきてくれ。こんな日に出て行くやつがあるか!」

「こんな日?」

 私は不思議そうに尋ねた。

「今日お前誕生日だろ……?」

 気がつかなかった。

もう何年も祝ってない誕生日。

旦那はそれを覚えてくれたのか……。

頬にさっきとは違う種類の涙がつたっていくのに気付いた。

今日はよく泣く日だわ。

「今から、帰るから……せめてお茶ぐらいは入れておいてね」

 私は手の甲で涙をふきながらそう言った。

 さぁ、自分の家に帰ろう。

 話す事はたくさんある……。

 

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この記事のコメント

No.764
まいど~
なかなか最後の章は劇的な結末で、楽しかったですよ~

結婚詐欺みたいな事って、判断が難しいと思いますね~本当に好きで付き合ってても最後の最後に何か気に入らなくなって、別れちゃう場合に、それまで費やしたお金を返せとか言っても言われても無理でしょうし、騙されたと気づかないまま別れた人も世の中にはたくさんいるでしょうね~

よく騙すより騙される方が良いなんて言われますが、騙されたくないものですよ~
雪さんはまだまだ若いですから、たくさんの出逢いがあって明るい未来が広がりますから、見る目を養って欲しいですが、センスある雪さんなら大丈夫でしょう、グ~☆

まぁ兎にも角にも、明日から腹立たしさの中ガソリン上がるから、今日溢れる位までセルフで満腹にしてきたセコい私ですが今の国の政策には騙されないぞぉ~w
ではまた
2008-04-30 Wed 23:49 | URL | ヒポユキ #-[ 内容変更]

No.766 ヒポユキさんへw
まいどどうもw
お返事遅れて申し訳ないです(>_<)

お褒めの言葉有難うございますw
そうですねー恋愛の99%は勘違いでできてるなんて聞いたことがあります。それならば、恋愛感情を装う結婚詐欺なんかは本当に判断が難しいですよねー……
騙すより騙される方が……でも、騙されたら傷つきますよねー^^;
本当に、騙されないくらい、いい女になりたいものです(笑)

ガソリン値段かなりあがっちゃいましたねー^^;
うーん……免許とりに行ってる矢先にこんなことで、何だかやる気が^^;
とにかく頑張りますねw
ではでは
コメント有難うございますw
2008-05-02 Fri 23:19 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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