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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  283

唐辛子

 好きな人ができました。

 初恋です。

 皆にそれを言うと、

「遅い!」

 と言って驚かれますが、私自身不思議だとは思いません。

 だって、運命の人にやっと会えたってことだから。

 

 彼は十歳以上も年上でそれでいて頼りない。

 彼と私はバイト先の喫茶店で出会った。

 この日は三十度を超える猛暑で、彼は犬のようにはぁはぁ言いながら喫茶店に入ってきた。

 私はいらっしゃいませと言って、彼に水を出そうとした。

「あの……」

 私は困った。

 彼が机の上で伸びていたので、水が置けなかったのだ。

「えっ?」

 彼は顔を上げて私を見た。

「あっごめん!」

 私のコップを持った右手を見ると顔を赤くして、机から頭をのけた。

「どうぞ」

 私は笑い出しそうなのを堪えながら、彼に水を出した。

「あなた、何か蕎麦みたい」

 つい口に出して言ってしまった。

 お客さんにため口で、それも意味不明なことを……

 怒られるかなっと思ったが彼の反応は意外なものだった。

「やっぱり?」

 彼は微笑みながらそう言った。

 その瞬間、私の中に電撃が走った。

 初めての感覚で、体中が心臓になったみたいにドキドキした。

 その後如何したか覚えてない。

 ただ、思ったのは彼は明日も来てくれるかな?と言う事だった。

 会いたいな。

 もう一度笑って欲しいな。

 その願いか通じたのか、彼はその日からうちの喫茶店に通うようになった。

 彼は喫茶店に来るたびいろんな話をした。

 会社の事、自分のこと、昔の彼女のこと……

 昔の彼女に彼は蕎麦みたいだと言われたらしい。

 私に言われて思い出したと楽しそうに彼は言った。

 でも、その話は私の心の中に微妙な変化をもたらした。

 その話を聞いて気付いたのだ。

 初めて会った時の笑顔は昔の彼女に向けられたものだと……。

 ズキン ズキン

 ドキドキしていたはずの心臓の音が変わった。

 何か痛いな……。

 ……嫉妬? これが?

 私は昔の彼女に向けられた笑顔に嫉妬をしていた。

「今日何か機嫌悪い?」

 彼は恐る恐る言った。

「私は元々こうなんです」

 私はつんけんと言った。

「君って、そうしてると唐辛子みたい……」

 彼は呟いた。

 唐辛子……?

 そりゃあ、元々気は強い方だけど……だからって!

 ケーキとかパフェとか、苺とか可愛い食べ物があふれてると言うのに、この人は私を唐辛子だと……?

 昔の彼女はなんだったって言うのよ!

「悪かったですね!」

 私は人目も気にせず彼を怒鳴りつけた。

「何怒ってんの?」

 彼は驚きを隠さずにそう言った。

「怒ってないです! 私はどうせ唐辛子ですから! 女らしくなくて、可愛くなくて、気が強くて! でも、あなたには関係ないでしょ! いいじゃない気が強くたって、あなたに迷惑かけた?」

「怒ってると思うけど……?」

「怒ってないわよ! 何よ! ほっといてよ! 毎日話しかけられて迷惑よ!」

 こんな事言うつもりじゃないのに……

 本当は話しかけてほしくてたまらないくせに。

 自分から嫌われるようなこと言って、馬鹿みたい。

 馬鹿だよね……。

「何で? 話しかけちゃ迷惑だった?」

 彼はいたって普通の調子でそう言った。

 怒るでもなく、笑うでもなく。

「迷惑よ! だって……だって……」

「何で?」

 彼は言葉が詰まった私にもう一度聞き返した。

「だって……あなたの事好きになっちゃうじゃない……。期待しちゃうじゃない……。無理な事これ以上望んじゃうじゃない……。」

 私は蚊の鳴くような声でそれだけ言った。

 泣きたくなった。

 何言ってるんだろう、私。

 こんなこと言って彼に如何してほしいんだろう。

 困らせたいわけじゃない。

 怒らせたいわけでもない。

 ただ……一緒にいたい。

 私を見てほしい。

 昔の彼女じゃなくて今の私を見てほしい。

 この人が好きだ……。

 とてつもなく好きだ……。

 一緒にいたい。

 目に涙がたまっていく。

 前を見ると、彼は……笑っていた。

「何で笑うのよ!」

 私は驚いたのを隠そうと強く出てみた。

「だって……蕎麦に唐辛子って合うと思わない?」

 彼は笑いながらそう言った。

 私はしばらく固まった後、笑いが止まらなくなった。

 気持ちを伝えてすらいないのに、勝手にふられて勝手に泣いていた自分を、とてつもなく笑ってやりたくなった。

 言っちゃう?

 言っちゃおうかな……

「私、蕎麦って好きだよ」

 私は他人事のようにそっけなくそう言った。

「俺も、蕎麦には唐辛子入れたら美味いと思うな」

 彼もふっと笑ってそう言った。

「名前は?」

 

 その時からあなたは私の恋人になった。

 唐辛子みたいな私に、蕎麦みたいな彼氏ができた。

 初恋は実らないって?

 私はそんな迷信信じない。

 だって、私の横には初恋の彼がいるんだから。

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この記事のコメント

No.931
まいど~
蕎麦と唐辛子は合いますね~っていうかセットですよね

私も蕎麦好きですがどんな真夏でもホットばっかりで、大食漢なのでライス食べて天ぷら蕎麦タイプを食べますよ~

ピリッと唐辛子みたいな女性って怖い感じしますけど、その怖い人に愛されたらもう怖いもんなしですよね~

まぁ兎にも角にも、今日のお昼はカップ天そば食べましたξ
ではまた
2008-06-30 Mon 01:00 | URL | ヒポユキ #-[ 内容変更]

No.932
唐辛子かぁw
じつは 本当にいわれたとか???w

オラは蜘蛛の糸のように 脆く
すぐキレますwww
2008-06-30 Mon 02:56 | URL | ヨヨ子 #-[ 内容変更]

ヒポユキさんへ
まいど~
コメントのお返事遅れてしまってスミマセン(>_<)
蕎麦と唐辛子はホント合いますよね~w
雪は七味唐辛子すっごく好きなんですよ^^
蕎麦は雪も温かいのが好きですが、今の季節運動なんかした後だったりすると、やっぱりついつい冷たい方を食べちゃいます^^;

唐辛子の辛さは魅力の一つですからw
ピリッとする雰囲気も魅力になるかもしれませんよ~^^

即席蕎麦の類も最近進歩してて美味しいですよね~w
ではでは^^
コメント有難うございましたi-237


ヨヨ子さんへ
コメントのお返事遅れてスミマセンでした(>_<)
言われたことはないですが、雪は唐辛子タイプですよ~w

蜘蛛の糸ですか~w
脆く切れやすいですけど、すぐに立ち直って再生しますよねw^^

ではでは、コメント有難うございましたw
2008-07-03 Thu 21:13 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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