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ブルームーン 素直になる日
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  402

素直になる日

クリスマスにちなんで久しぶりに短い小説を書いてみました。
物ぐさになってきたのか、一言シリーズを書いていると長い文章の書き方を忘れてしまいます。
元々持っていたものをそんなところでも失っている気がして、少し寂しいです。
とりあえず、書いている途中に話がグダグダになるのを感じつつも書き上げた短編小説です^^;
お時間のある方、ほんの少しお付き合いしてくださると嬉しいです。

小米雪



『素直になる日』

「なぁ、クリスマスってそんなに大事?」

 彼が私の隣で日本酒を飲みながら尋ねる。日本酒とクリスマスというミスマッチな感じが私を少し驚かせた。

「いきなり何?」

 私もグラスを空けながら答えた。但し、こちらは甘いカクテル。日本酒の味は如何も好きではなかったから。

「彼女がさ、クリスマスの予定をやたらと聞いてくるから……」

「聞いてくるから?」

 言葉が止まった彼に質問を投げかけると、彼は口元を歪ませた。失笑といったところだろう。

「ほら、クリスマスって平日じゃん? 別に国民の休日って訳でもないし、勿論会社だってある」

「つまり?」

「そのままだよ。会社があるよって」

「あー……」

 私は苦笑いを浮かべながらグラスを口に運ぶ。カクテルは殆ど入っておらず、グラスの中の氷がカラリと音をたてた。

「そしたら、彼女怒っちゃってさ」

「んー。分からなくもないけどね」

「そうか? 別にいいじゃん。クリスマスだからって特別なことしなくても」

「そうねー」

 相槌をうちながらも、「分かってない」とそう思う。

「大体、クリスマスに何があるわけ? 恋人同士で過ごす日? そんなの誰が決めた? つまらないだろ? そんなの――」

「昔はさ……」

「ん?」

 ポツリと呟くように話す私に、彼は話す勢いを緩める。

「いや、昔はワクワクしなかったのかなぁー……と思って」

「昔って?」

「子供の頃。別に何があるわけじゃない、そんなある意味平凡な一日に最も心を躍らせなかった?」

 私は昔を思い出しながら彼に問いかける。

 クリスマスが近づくだけでワクワクした。

 赤や緑で飾られた街にジングルベルが流れ、おもちゃ屋の前では何時もは手の届かないおもちゃが並ぶ。恋人とか誰と過ごすかなんて考えないで、唯その夜に食べるものとプレゼントに心躍らせた。

 イブの夜には信じていないといいつつもこっそりと枕元に靴下をぶら下げ、クリスマスの朝、隣りに置かれている自分へのプレゼントにはなんとも言えない嬉しさが募ったものだ。

「忘れたくないのよ」

「何を?」

 彼は不思議そうにまた日本酒のグラスを空ける。私はそれを見計らって自分の分と彼の分のカクテルを頼んだ。

「甘いものは飲まないよ」

 顔を歪ませてそういう彼に、私は笑うと、

「カクテルのグラスって綺麗でしょ?」

 と問いかける。

「……まあな?」

 彼は首を傾げながら答えた。私はその答えに満足すると言葉を続けた。

「本当はそれだけでいいの」

「へ?」

「ロマンチックな演出も、高いプレゼントもいらないの。本当は大切な人と、楽しいね、綺麗だねって言い合える空間が欲しいだけ」

「何だよそれ?」

「クリスマスが特別かなんて如何でもいいの。特別か如何かじゃなくて、特別にしたいの。大人になるとね、子供の頃に当たり前に出来ていたことが出来なくなるの。美味しいものを食べてはしゃぐことも、綺麗なものを見て喜ぶことも、大切な人に大好きと伝えることも……。昔みたいに簡単にできないの」

 私自身話している途中何が言いたいのか分からなくなってきていた。唯、甘いカクテルの味にアルコールの苦味が混ざっていることが自分が大人になってしまったんだということを分からせるようで、寂しくなった。

「仕方ないだろ? 子供ほど単純でいられないんだから」

 彼は訳が分からないという表情でそう言う。あぁ、本当に分かってない。

 仕方がない? 分かってるわ。クリスマスに浮かれる人々は多分皆分かってる。

「だからこそ、その日が大切なのよ」

 クリスマスの朝、プレゼントに何をもらったかよりも、其処にプレゼントが置かれていることが大切だった。

 イブの夜、布団を出て寒がりながらも窓に近寄った。

 何も見えなくてもよかった。冬の空に何かがいてくれるのかも知れない、そう思えることが幸せだった。

「オーバーじゃない?」

 彼は笑いながらそう言う。男性の現実主義もこうなると少し寂しい。

「大人は素直ではいられない。だから、素直になれる日に大切な人と過ごしたいと思うんじゃないの?」

「素直に?」

「えぇ。本当はその日じゃなくたっていいのよ。でもね、大人になるにつれて、人って理由がないと動けないの。感情じゃ動けないの」

「まぁなー。それは分かるけど……」

「おもちゃ会社の陰謀でも、経済効果でも何でもいいじゃない? それに乗っかって一番大切な気持ちを伝えられるなら、そのことの方が大切でしょ?」

 私はそういうと、運ばれてきたカクテルに口をつける。甘い。そして、苦い。

「……んー、そうかな?」

「そうよ。そんな日がないと、皆自分の気持ちを口に出せないの。大好き。有難う。愛してる。なんだっていい。一番大切な言葉を言える時が欲しいのよ」

「……。あー……ちょっと、彼女に電話してくるわ」

 運ばれてきたカクテルに口もつけずに、彼は席を外す。私はその隙に自分の分を飲み干し、彼のカクテルを飲み始める。

 あんなことを彼に言っておいて、素直じゃないのは誰なんだ?

 一番大切な言葉を言える時が欲しい、切実にそう思う。

 電話の向こうの愛しい人に柔らかな表情で話す彼を見ながら、私は二杯のグラスを空にしてやった。

 とりあえず、彼のお酒を勝手に飲んだことを謝るのは止めよう。

 だって、大人になると素直ではいられないのだから。

 

 

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この記事のコメント

No.1283
今回の「私」はなんとなく、雪っぽい感じだね~^^私の中では、今までのお話の中で今回のお話が一番好きだよ★
2008-12-18 Thu 15:27 | URL | あぁや #-[ 内容変更]

No.1284
まいど~
なんか良いですよね~
青春時代のクリスマスって色々考えちゃいますよね
素直に楽しめる人と、背を向けたがる人と、どうでも良い人と、皆さん何かしら意識はしちゃうのですよね
私は若い頃はなんか背を向けてた気がしますが、実はパーティーなんかに誘われると、一番はしゃいでたようですw

まぁ兎にも角にも、若き雪さんの読み物は私の若い頃思い出させてくれて楽しめます~感謝します
ではまた
2008-12-19 Fri 00:07 | URL | ヒポユキ #-[ 内容変更]

あぁやへ
うちっぽいかなぁー?
悲恋ものっぽいところがうちっぽいとか……?(笑)
書いてるうちにオチがなくなり、まとまりが無くなり、如何しようかと思ったんで好きって言ってもらえるとありがたいです^^;
リクエスト通り心安らぐ感じの話しやったかなぁ?^^


ヒポユキさんへ
まいど~^^
そうですねーw 男の子も女の子も何所かしらクリスマスって意識してますよねw
ちなみに、寂しさの裏返しで言う常套文句が「うち仏教だし……」だったりします。
寂しい時ほど、キリスト教は関係ない! と言い訳したくなるんでしょうね^^;
この時期よくその言葉を聞きます……(笑)

そう言ってもらえるとありがたいです^^
これからも頑張って書きますねw
ではでは
2008-12-20 Sat 00:13 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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