キーワード出現率
ブルームーン 暖かい手
FC2ブログ

ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  405

暖かい手

クリスマスイブですね^^
皆様いかがお過ごしでしょうか?
素敵な恋人とデート? 
羨ましいですw
雪は昨日の飲み会の疲れが尾を引いて、イブは外に出ないと決め込んでおりました(笑)
明日は少し出かけてくるのですが、本日一日普通じゃないのはテレビの中だけというところでした^^;
いい女子大生が、こんなことじゃ駄目だなぁーと思いつつ、本日も短編小説をお送りします。

小米雪



『暖かい手』

「寒い……」

 冬の町の風は容赦がなくて、吐息は白く空に浮かんだと思ったら、すぐに消えていく。

 冷え切ったベンチに一人座りながら、雪でも降りそうな冬の空を眺めた。

 彼氏との知り合った記念日がクリスマスで、大切にしたいとずっと思ってた。

 女性は記念日が好きだと、よく男性は零している。

 何時もそういう話を聞くたびに思う。如何して記念日が好きだと思うのだろうと。如何して記念日の先にいる男性が好きだと思わないのだろうと。

――クリスマスは如何する?

 そう聞いたとたんに彼氏の眉間に皺がよった。あぁ、そうよね。あなたはクリスマスが嫌いよね。だってあの時大好きな女の人に振られたんだもの。

 二年前のクリスマス。コンビニでバイトをしていた私。一人の男性がワクワクしながら、コンビニの前のツリーに寄ってきた。イルミネーションで輝くツリーはカップルであふれていて、皆にこやかな表情をしながらツリーと時計を見比べていた。一人一人と相手が迎えに来て、笑いながら去っていく。

 自分には関係の無いことだと思いながら、コンビニの中でバイトをしていた。温かい部屋の中に居るはずなのに、外に居る彼らよりもよっぽど自分の方が寒々しい気がした。

 9時ごろには大抵の人が何処かへ去っていって、気付けばツリーの前には先ほどの男性一人だった。
 誰を待ってるの?

 そう聞きたくなるような男性の背中を見ながら、クリスマスムードのあふれる街を眺める。
 クリスマスだからと店長から渡されたサンタの衣装。一人のもののサンタクロースが配れるものなんて所詮コンビニの割引券とそれなりの笑顔くらいで、そんなもので客が増えているか如何かなんか聞くまでもなかった。

「如何かしたの?」

 バイト中にボーっと窓の外を眺める私に店長が聞いてきた。

「あの男の人、何やってるんですかね?」

「ん? あぁ、ありゃ振られたくちだね。毎年何人かは居るんだ、あぁいうのが。俺も昔はさ――」

「はぁ?」

「あぁやって何時間も来ない女を待ってたんだよなぁー」

「で、如何なったんですか?」

「ん? 聞きたいか?」

「えぇ」

 暇つぶしで、と続けようと思った言葉を何とか飲み込んだ。

「一晩中待っててさー。結局来ないんだよ。多分その女は他の男とよろしくやってたんだろうけど、それでも諦めきれないんだよなぁー。で、寒いんだけど結局帰れない。『気が変わったの』なんて言いながら自分のもとに来てくれるかもしれないなんて思って、動けなくなっちゃうんだよ」

「はぁ」

 店長は凄く熱く語っていて、それだけで温暖化を進められる気さえした。

「そしたらさ……明け方に通りかかった女の子がさ、俺に話しかけてくれたんだ。『何してるの?』って」

「へぇー」

「あまりの寂しさにその女の子に事情を話したら、その子に笑われたんだよ。『うわっ! ダサーイ』って」

「冷たいですね」

「そう思うか?」

 含み笑いをしながら店長が私を見た。

「えっ?」 

「笑ってくれてさ……助かったんだよ」

「如何いうことですか?」

 私は不思議そうに尋ねる。もし、今ガラス越しに立っている彼を笑いに行こうものならば、強力な一発でもお見舞いしてくれそうだ。

「自分でも惨めなのなんて分かってたんだ。唯な、誰も笑ってくれないと本当に惨めになってくんだよ。誰も来てくれなくて、誰からも相手にされなくて、幸せそうなカップルが集う街をひたすら眺めている自分は、一体誰なんだろうって。本当に自分が透明人間なんじゃないかって思えてくるんだよなぁー……」

 最後の方は私に話しているというよりも、自分自身の世界に浸っているといった感じだった。

 そんな店長の言葉を聞きながら、窓のその外の男性を眺める。

 きっと楽しみにしてたんだろうなぁ。素敵な女の人と過ごす素敵なひと時を夢見ていたのだろう。お洒落してるし、手には有名なブランドの紙袋を持ってる。

 何時から自分はあれほどワクワクするクリスマスを過ごしていないのだろう。

 外で来ない誰かを待っている彼と、中で誰も来ないことを諦めつつバイトをする私。本当はどちらが不幸なのだろうか。

 昔話を思い出した。パンドラの箱には最後に希望が入っていると。世の中ではそれをいいことだと話されているけども、希望がなければ絶望できるのに……希望さえ箱から出てこなければ、何も頑張らなくてもいいのに……とよく思う。

 彼にはきっとまだ希望がある。素敵な女性が来てくれるかも知れないという希望がある。でも……私には何がある? 頑張ることすらも諦めて、誰か王子様は現れないかしら? 何てつまらない妄想を繰り広げて、そこにあるのは何でもない。唯の怠惰と寂しさだけ。

 頑張らなくてもいいということはすべてを諦めたということで、頑張らなくてもいいということは人生を楽しまないということでもある。私には彼を馬鹿にすることすら出来ない。自分はそれほど寂しい女なのだと、窓の外を眺めながら悟った。

「懐かしーなぁ……ちなみにさ」

 店長は私が聞いていなかった間も黙々と話を続けてたらしく、嬉しそうに声を張り上げた。

「何ですか?」

「その時の子、今の女房だから」

 店長の言葉に私は驚いて、もう一度外を眺めた。

 本当に私は諦めてる? 本当に希望を持ってない? 本当に私には何もない?

 全部違う。諦めたのでも、希望を持たなくなったのでも、何もない訳でもない。違う、全部そういう振りをしていただけだ。如何でもいい振りをして、何時しか傷つかないように自分を守ってたんだ……。

 それがどんなに寂しくて、空しいことか、本当は自分が一番よく分かってた。でも、外に居る彼のような人を見ることで、馬鹿だなぁと思うことで、自分を守って、正当化して、それで自分のプライドを保ってた。

「駄目ですよねー……私」

「ん?」

「こんな所で働いてて、外に居るあの人よりももっと寂しいですよ」

「あーまぁ君みたいな子がいないと、アルバイトが居なくて困るしさ……。それにしても、こんな所は酷くないか? 一応店長が居るんだから……」

 苦笑いをしながら店長が私の肩を叩く。あっセクハラだ。

「んー……君、もう上がる?」

「何でですか?」

「これ持ってさ、帰って良いよ」

 店長はそういうと保温ボックスの中の肉まんをいくつか私に手渡した。

「クリスマスに肉まんですか?」

 私は眉間に皺を寄せながらそう言った。

「あぁ、多分さ……寒い時はどんなもんよりも温かいこれが嬉しいと思うからな」

 店長は笑いながらそう言って、私の背中を押す。だからセクハラだって……。

「よく分からないですけど、じゃあ、あがりますね。お疲れ様です」

「はいはい。お疲れ様! メリークリスマス!」

 妙にテンションの高い店長を相手にする気になれなくて、私は控え室に入っていった。

 何だこの肉まんは?

 服を着替えて、寒い寒いと言いつつ外に出た。

 目の前にはあの男の人……。

「何やってんの?」

 思わず声をかけた。聞かなくても分かってる筈だったのに……。

「見てわかんないの?」

 分かんないよ……。ずっと見てたけど、分かんないよ……。

「わかんないから聞いてんの」

 そう言ってから、ふと、自分の手元を見た。あっそういう意味か……

「ねぇ、これ食べる?」

 彼はゆっくりと私の手から肉まんを取った。

 二年前、あの瞬間から私はパンドラの箱の意味を知ったのかもしれない。もう一度箱をあけなければ、私はきっとこの寒空の下で待っていることなんてなかったんだろう。

「なぁ、これ食べる?」

 ボーっとする私の頬に妙に温かい手が押し付けられる。

 あの時の自分の手もきっとこれくらい暖かかったのだろう、と思った。

「……食べる」

「うん。なぁ、食べたらさ……」

「ん?」

「イルミネーションでも見て、家帰るか。クリスマスの街は好きじゃないんだ」

「知ってるよ」

 私はそういいながら彼の手を掴んだ。君がクリスマスを好きじゃないことくらい二年前から知ってるよ。唯、イルミネーションへ行こうよと言った君の言葉が私との記念日への譲歩のようで、思わず頬を緩ませた。

 あぁ、本当に寒い時はどんなものよりも温かいこれが嬉しいみたいだ。

 

スポンサーサイト



別窓 | 短編小説 | コメント:5 | トラックバック:0
∧top | under∨
<<クリスマスプレゼント | ブルームーン | 迎えに行くから>>

この記事のコメント

No.1294
まいど~
メリクリ~(^o^)/

イブだろうと正月だろうと、働いてる方々が居りますからねぇ~
皆なかなか独りきりにはなれないものです
肉まんの温かみは寒いほど染みますよね~素敵なお話ですね~

まぁ兎にも角にも、我が家では今年も母と二人きりのショートケーキを粛々と食べていると飯島愛ちゃんの衝撃的なニュースが流れ、悲しみのイブでした
愛ちゃんの分もしっかり生きようと勝手に思ったりしました~
ではまた
2008-12-25 Thu 00:46 | URL | ヒポユキ #-[ 内容変更]

No.1295
雪、メリークリスマス★愛してるよ~♪
みんなと囲む食堂の温かさをなんとなく思い出しました。あぁ、何だかクリスマス肉まん、雪たちと食べたくなっちゃった。でゎでゎ(^^)
2008-12-25 Thu 14:07 | URL | あぁや #-[ 内容変更]

ヒポユキさんへ
メリークリスマスw

そうですね^^
働いている方がいらっしゃるから、楽しめる人もいるんですけどねw
寒い時の肉まんは本当に美味しいですよね^^
冷めてしまうまでのあの少しの時間が凄く優しい気がします。

飯島愛さん残念でしたね。ご冥福をお祈りいたします。
本当にあぁいうニュースを見るたび強く生きなきゃと思いますよねw
ではでは


あぁやへ
メリークリスマスw
うちも愛してるよ~^^
年明けても、みんなで食堂のテーブル囲もうねw
あぁやはきっとクリスマスは教会やろなぁー^^
クリスマスは無理やったけど、今度みんなで肉まん食べよねw
ではでは
2008-12-25 Thu 23:58 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

No.1297
肉まんは大好物です。飯島愛さんは、可愛そうですね。合掌。
2008-12-26 Fri 01:29 | URL | 荒野鷹虎 #-[ 内容変更]

No.1298 荒野鷹虎さんへ
肉まん美味しいですよね^^
雪も大好きですw
特にこの時期は美味しいですw

飯島愛さんは本当にかわいそうでしたね……。
ご冥福をお祈りいたします。
ではでは
2008-12-27 Sat 22:19 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

∧top | under∨
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック

∧top | under∨
| ブルームーン |