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ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
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No  472

パンドラの甲4

パンドラの甲4

「先生のお話を聞かれてどう思われましたか?」
桜木カウンセラーは柔らかい雰囲気を醸し出しながらそう言った。
「どうって言われても……」
私はツンケンした態度ではあったが先程より幾分か棘を引っ込めていた。
「そうですよね。難しいですよね」
桜木カウンセラーはそう言うと、ふと私の手を見た。私は手に視線が来るのが嫌で何となく広げていた手で拳を作った。
その仕草に気がついたのか、桜木カウンセラーはふっと頬を緩めると、
「昔、私の同級生にも同じ症状の女の子が居たんですよ」
と話し始める。
「同級生?」
私は突然変わった話についていけなくて聞き返した。
「はい。小学校の時の話ですけどね」
桜木カウンセラーは懐かしそうにそう語る。それに対して私は、
「この病気の人ってそんなに沢山いるんですか?」
と聞き返した。
「遺伝性疾患は一般的な病気からするとどの病気を取っても頻度が低いものが多いです。ですので、この病気の方も沢山いるとは言い難いです。推定される頻度としては10万人に1.5人くらいのものです」
桜木カウンセラーは淡々と話す。
「……凄い少ないんですね。じゃあ、先生はそんな珍しい病気の人を二人も見てるんですね」
何か言わずにいられなくて意味の無い言葉を吐いた。
「そうですね。その子も田所さんと同じで人に手を見られると拳を作っていました。気は強い子に見えたんですがやはり気にしていたんでしょうね」
私は桜木カウンセラーの声を聞きながら、はるか昔に私の手をサラサラだと言って触れた少年を思い出した。
「先生はそれでどうされたんですか?」
「触ってみたんです」
「触って?」
「はい。なんだか勿体無い気がして」
桜木カウンセラーは再び頬を緩ませる。
「勿体無い?」
「ええ。その女の子は凄く手を気にしているように私には見えました。ですが、彼女が隠さなければならないほど周りは気にしていなかったんですよ」
「気にしていないって……。周りに色々言われるから、自分が異色であることに気がつくんです。人とは違うって!」
私は自分自身で少し感情的になっているのを感じたが、言葉は止まらず流れて行った。
「すみません。そういう意味で言ったんでは無いんですよ。何というのか、その女の子は凄く色が白くて小柄な子でした。なので、男子がその子を意識してちょっかいをかけていたんですよ。手がどうとかそういうことではなく」
桜木カウンセラーは少し罰が悪そうに付け足した。
「先生には分からないんですよ。そんなこと言ったって、その子がからかわれたのは『手』だった訳でしょ? だったら、手が理由だったか他に意味があったのかなんて、からかった男の子にしか分かりません。ただ、女の子は手の所為だって思ったでしょうね……」
私は昔の自分自身を弁護していた。
「そうですね。もしかしたら、からかった男の子は自分と違うものを認められなかったのかも知れません。分からないものを怖いと感じたのかも知れません。ですが、一つだけ言えることがあります」
桜木カウンセラーは淡々とそう言うと私の目をまっすぐに見た。射抜くような視線に私は動けなくなった気がした。
「……言えること?」
「はい。私がその女の子の手に触れたのは、唯触れてみたかっただけだということです。他と違うとか、見た目が何だとかどうでもよくて、少し気になる女の子の手に触れたかったんですよ」
桜木カウンセラーの言葉が自分に対する告白の様に聞こえて、私はうぬぼれから顔を熱くした。
「先生はその子のことを好きでしたか? 手が違うから気持ち悪いとかそんなことを思わずに、他の女の子と同じように接することは出来ましたか?」
何時しか私は頭ではなく、口に溜まる言葉を吐き出していた。
「……はい。逆に好きだからこそ他の女の子と同じ扱いは出来てなかったかも知れませんね。ですが、その子に対して嫌だとか変だっていう感情はなかったです」
にっこりと笑ってそういう桜木カウンセラーに昔の少年の面影が重なった。
「そうですか。……先生、この手って私の子どもにも遺伝するんですか?」
何となく、先程の桜木カウンセラーの回答で少し現実に帰れた気がした。今自分が見なければいけない方向は過去ではなく未来なのだ。
「この疾患は『常染色体優性遺伝』という形式を取ります。ですので、田所さんがお子さんを産まれる場合、そのお子さん一人一人につき50%の割合で遺伝することになります」
雑談は凄く柔らかな雰囲気で話すのだが、こういう情報は凄く淡々と語ってくれた。それが現実味を帯びていて、今の私にはありがたい気がした。

パンドラの甲5へ続く

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