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ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
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No  479

出発の時3

出発の時3

「そうね、私は幸せなのね……」
私はそう言うと口をつぐんだ。自分はこれほどの恩恵を受けていながら、私はまだ自分の幸せのために悩んでいる。
――お腹の中の命をどうするかどうか。
なんて身勝手な人間なのだろう。そう思うと心底自分が嫌になった。
「……僕がお姉ちゃんの子どもなら幸せになれるかな?」
彼はまたしても不思議なことを言った。
私は少し考える。確かに、命を産み育てるということは並大抵のことではないだろう。
そして、その大変さを考えた時、目に見えない胎児であれば、なかったことにしてしまうのはある意味簡単なのかも知れない。
だが、目の前の男の子なら……?
私にこの子をいらないからと殺せるか。答えは否。
凄く複雑だった。二つの命は両方とも目の前にあるものなのに、一つは地上に出てくることすら悩まれなければならない。
私のお腹の中には目の前にいる少年と同じ生き物がいるのだ。
私はその時初めてそのことに気がついた気がした。
「あなたは幸せ?」
私は彼に尋ねた。
「……分からない」
彼は小さく答えた。
私は「そう」とだけ言って空を見た。不思議だ。彼と話しているほんの数時間で私の気持ちは格段に変化していた。
どうやってなかったものにしようかと考えていた命なのに、今はどうすれば守れるのかと言う感情が浮かんでいた。
母親も父親もきっと私を叱るだろう。なんだかんだで世間体にはうるさい両親だ。それでも、私はそんな両親に守ってもらったからここまで来れた。私もこの子を守らなければならないのだ。それが、私自身の人生に対する責任であり、命に対する責任なのだ。
「お姉ちゃん、もう子どもではいられないみたい」
私は彼にそう言う。
「お姉ちゃんは、大人でしょ? 変なの」
彼は不思議そうにそう答えた。
そう。私は大人にならなければいけない。行動と責任をきちんと見据えた大人に。
唯、最後に一つだけ。若気の至りと言われてもいい。この命を守るために駄々をこねてやろう。賽は投げられた。


「お母さん! 早くしてよ!」
娘の声が聞こえた。
懐かしい夢を見ていた気がする。あれから十年程経った。親に半ば勘当された形で家を飛び出し、住み込みで働きながら何とか生きてきた。正直、後悔がないかと尋ねられたら返事をためらってしまう。だが、何度同じ選択を迫られてもきっと同じ答えを選んでいたのだろうと思う。
この子を産まなければよかったと思ったことは一度もない。
毎晩の夜泣きに近所からの苦情、外せない用事の時限って駄々をこねたり熱を出した。
この野郎と思ったことは何度もあるが、それでも自分に対して100%の信頼を寄せている弱々しい娘を心底愛おしいと思った。
……あの男の子は一体誰だったのだろう。それは今でも分からない。
若かった自分は勝手にファンタジーを描いて、「あの男の子は自分の子で、産まれる前に会いに来てくれたんだ!」と思ったこともあった。その所為か、何ヶ月目かの検診でお腹の中の赤ちゃんが女の子だと分かった時は拍子抜けしてしまった。
「お父さんも遅刻するから起きて!」
娘が主人を叩いている。小学校で覚えてくるのか言葉が日々達者になっているのが分かる。
娘を保育園に預けられる時期になって、正社員で働ける仕事を探した。その職場に営業で来ていた主人と出会って結婚したのが3年ほど前の話だ。
ふと身に覚えのある倦怠感と、カレンダーをみて思うことがある。
「今度はあの子に会えるかな」
私はポツリと呟いた。
その言葉に不思議そうな顔をする主人と娘に、
「もしかしたら今日の夜ビックニュースがあるかも」
とだけ伝えると、私は鼻歌を歌いながら朝ごはんの用意をする。
まだ鳴りもしない心音がお腹から聞こえる気がして、私は何時もよりネギを刻む手を速めた。
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この記事のコメント

No.1496
はぉv-238
インフルエンザにかかってダウン気味のあぁやさんが通りますよv-218

今回はより雪らしい感じの話だった気がするv-219
また新作期待してますよv-238
2011-01-25 Tue 08:26 | URL | あぁや #-[ 内容変更]

No.1497 あぁやへ
どもどもw
インフルかかっちゃったか^^;
うちは現在医療従事者になっちゃったもんで、予防接種は必須でした。院に入って今までの人生で一番注射を打った一年だったかも知れない。。。

水嶋ヒロみたいに命についての小説を……(笑)
ちゃんと勉強して、文章の勉強とかもして、ある程度仕事で立場がついたら海道さんみたいに専門分野の小説書きたいなぁーw
取りあえず、ここで練習がてら^^;
まぁ、暇つぶしにでもして頂戴^^

ではでは
あぁや、インフルエンザお大事に。
早く治りますように☆ミ
2011-01-25 Tue 23:38 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

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