キーワード出現率
ブルームーン 赤鼻のトナカイ

ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

別窓 | スポンサー広告
∧top | under∨
No  510

赤鼻のトナカイ

真っ赤なお鼻のトナカイさん。
皆に笑いものにされているトナカイさん。
そんなトナカイが、サンタクロースの一言でどれほど救われたのだろう……。

カチャカチャカチャ 
規則正しくキーボードを叩く音が室内に響く。オフィスの中には無駄口をたたく者は四半世紀前に絶滅した。
前社長の汚職問題が取り上げられ、我が社の経営が傾き、そこからはリストラの嵐。
日々、自身の保身を図るために皆が無言で与えられた仕事をこなした。
それでも経営状態は改善されたとは言い難く、社内にはいつも張りつめた空気が流れていた。
私も自分の仕事に没頭する。誰でも出来る、私じゃなくてもいい仕事に。
一般事務職のOLは若い方が良い。誰でもいい仕事なんだから若いに越したことはない。
そんな空気を読み取ってか、今や殆どの事務職が若い派遣社員で賄われている。
彼女たちが纏うきらびやかな空気に自分にはない魅力を感じ取り、時折むなしくなる。
頭が良いわけでも、容姿がずば抜けていいわけでもない私にとって、美しいと言うだけで一つの脅威になるには十分だ。

――○○さんの仕事には穴がある。きちんと手直しをしてから提出
――△△さんはいつも期日を守らない。今月末までの仕事の提出期限をもう一度確認しておくこと
そんな美しいオフィスの花の後始末を気がつけば自分がやることになっていて、私の頭の中の予定表には無駄なものが書き込まれていく。
ふと思う。私の後始末は誰がしてくれるんだろう……。

○○さんは若いけど一児のママ。仕事が出来ない訳ではないが、なんせよく休む。穴埋めは私。
△△さんは彼との結婚が秒読み。仕事に手を抜いているのがありありと分かる。手直しは私。
どうして、補償のある――誰かに守ってもらえる人を私が守らなければいけないのだろう。

むなしくなる考えを頭から振り払いながら思う。
私は私。
唯、私は私と言ったところで、そう思ってるのは自分だけだということは明らかだった。
私が居なくなっても会社は何ら困らないだろう。だって、会社が困らないようにきちんと仕事をしているから。
でも、それは誰も評価してくれない……。
カチャカチャカチャ カチャカチャカチャ
「どうしたの?」
驚いたような声に顔をあげると、チーフがこちらを覗きこんでいた。自分より少し年上のその女性は、憧れでもあり恐怖の対象でもあった。
「いえ……それより何か?」
そっけない返事を返し、要件を尋ねる。
「何かって……だって泣いてるわよ?」
「はっ?」
チーフの言葉に驚き、自分の目元を触る。確かに気がつけば涙が流れていたらしい。
「何かあった? ちょうどお昼だし一緒に行こうか」
チーフの提案に断る理由は無かったが、何があったのかは自分でもあまり分からない。
強いて言うなら、むなしくなったのだ。
「ちょっと待ってて、財布取ってくるから」
そう言ってチーフは私の元を離れかけたが、「あっ」と声をあげ立ち止った。
「何か?」
そう尋ねる私に、チーフは柔らかく微笑むと、
「この間の書類凄く良く出来てた。ほら、あの見積書。ああいうのって誰でもいいと思われてるけど性格出るのよね。本当、あなたに頼むと丁寧で細かいところまで気遣ってくれてるから助かっちゃうの。ここだけの話、他の人だとなんかしっくりこないのよね」
と言ってくれた。
――肩の力が抜ける。今の言葉は何の魔法だったんだろう。
今度は自分でもはっきりと分かるほど涙が流れた。
「えっ!? ごめんね、私何か言った!?」
チーフは泣きだした私を見て慌てふためく。私は無言で首を振りながら微笑む。
「と、取りあえず、お昼! 今度こそお財布取ってくるから! 話はあとでね!」
小走りで私のディスクを離れるチーフに心の中で御礼を言う。

私で無ければ駄目。私の仕事がある。
誰かにずっとそう言って欲しかった……。
誰でもいいじゃなくて、私がいいと。

取りあえず、涙をハンカチで拭い、お財布とポーチを持った。
折角褒めてもらえたのに、オフィスで無くなんてプロのOL失格だ……。
力の抜けた肩をくるりと回し、今日のお昼はチーフが好きな中華と考えながら、立ちあがった。

多分、サンタクロースに認められた赤鼻のトナカイも同じような気持ちだったのだろう。
窓から見えるクリスマスムードに私は鼻歌を口ずさんだ。



スポンサーサイト

別窓 | 短編小説 | コメント:2 | トラックバック:0
∧top | under∨
<<素直 | ブルームーン | 婚姻届の有無>>

この記事のコメント

No.1556
 人目につかない努力は、たとえ途中で迷ったり、腐ったとしても、思いもかけない誰かが見ていてくれる、ということが意外と多いですよね。
 そういったことがあればこそ、あまり関わりのない誰かの努力を見守ることも、出来るようになるのでしょうか?

2011-11-28 Mon 22:19 | URL | 火酒 #-[ 内容変更]

No.1557 火酒さんへ
そうですよね。
そういう細かいところに気がついてくださる方には本当に救われる時があります。
それこそ、疲れている時に「頑張りすぎてるよ」と言ってくれるだけで、頑張ってるのを認めてもらえているようで、嬉しくなりますしね^^

誰かの努力を見守るのは本当に難しいことだと思います。
そんな人になれたら素敵なのですがw
唯、自分の今の状況が周りの人によって出来ていることに感謝出来れば、そう言う人になっていけるのかも知れないなぁーと思う今日この頃です。

ではでは
季節柄体調を崩しやすいのでご自愛くださいませ^^

2011-12-04 Sun 01:17 | URL | 小米雪 #2zzHlsOw[ 内容変更]

∧top | under∨
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック

∧top | under∨
| ブルームーン |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。