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ブルームーン kiss-手の上に尊敬のキスを- 2
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ブルームーン

ここでは小米雪の普段の生活で気になるお話をエッセイ形式で書き記していきますw
No  79

kiss-手の上に尊敬のキスを- 2

小説の第二回目です。
前回のが読みたい方はこちらをどうぞ⇒「kiss―手の上に尊敬のキスを―」
続きは追記でどうぞ?237


「姫様!」

 ホルダーは彼女を追いかけて、テラスまでやってきた。

 テラスから差し込む光はスバルの髪に反射し、キラキラと光って見えた。そう、この国の名前のもとである、あの一等星のアルデバランの様に。

 スバルは彼の声に気がつかなかったのか、唯ぼんやりと空を見上げていた。

 ホルダーはもう一度声をかけようと、一歩足を進めて気がついた。

 ――泣いている。

 あの星のように綺麗な笑顔を見せる姫が泣いているのだ。

 そういえば何時のことだっただろう。彼女の本当の笑顔を見たのは。

 彼女が笑っているだけで、自分を始めとする周りの者達はいつも笑っていられた。

 いや、彼女が笑っているからこそ笑顔でいられたのだ。

 今この王宮に流れるなんとも言えない張り詰めた空気は彼女の笑顔を失ったからではないだろうかとも言えるような気がした。

「……ホルガー」

 スバルの小さな声で、ホルガーは自分がぼんやりとしていたことに気がついた。

「すみません」

「如何して謝るの? 謝らなければならないのは私でしょ?」

 スバルは悲しそうな笑みを浮かべた。

 違う、俺が見たいのはこんな笑みではなかった筈だ。

「姫様。笑って頂けませんか?」

 ホルガーは自分でも意識せぬままそう口にしていた。

「えっ?」

 スバルは呆気にとられたような顔をして、その後クスリと笑った。

「何を言ってるの? ホルガーったら」

 あぁ、この顔だ。俺はこの顔が見たかったのだ。

「そのお顔、久しぶりに拝見いたしました」

 ホルガーは柔らかな笑顔を向けながらそう言った。

 その笑顔にスバルは少し顔を赤くして、

「ねぇ、私そんなに笑ってなかった?」

 と言った。

「いえ、笑ってはいらっしゃいましたが、いつも絵画のように笑顔が張り付いていらっしゃいました」

「そう……そうかもしれないわね。ホルガーだけよ。そうはっきりと言ってくれるのは。だから私、自分が分からなくなったらあなたに聞くことにしてるの。自分で考えるよりも私の気持ちを分かってくれてるから」

「勿体無い褒め言葉です」

 ホルガーはスバルの前に立つと、頭を下げた。

「ねぇ、ホルガー私は婚約者を見つけたいのかしら?」

「えっ?」

「ごめんなさいね。こんな事聞いて……分からないのよ。唯、私の決断一つでこの国の次期王が決ってしまうことが怖いの。私、生きてきて初めて怖いと感じているわ。今までどれだけ回りに頼ってきたのかがよく分かった。初めて迫られた自分自身の問題である選択を全く選べずにいるんだから」

 スバルはまた悲しそうな顔をした。

「ですが、それは私達の責任でもあります。姫様が困らないように、先に先に色んなものを片付けてきたのは私達です」

 ホルガーはスバルを庇うようにそう言った。

「そうかもしれないわ。でもね、私は姫なの。何も選ぶことのできないお飾りの姫なんて必要なのかしら?」

 お飾りなんかじゃありません、ホルガーはそう口にしようとしたがスバルの目から涙が再びポロポロと流れ落ち始めると、自然と口は閉じてしまった。

「姫様はこの国がお好きですか?」

 ホルガーは沈黙を破るように小さくそう尋ねた。

「えっ?」

「私はこの国が大好きです。内乱も他国との戦争も無く、緑と平和に溢れています。これでも一つ前の王の世代まで戦争が行なわれていたそうですよ。それを、今の王様は王妃様のお力を借りて、こんな平和な国をお作りになりました。そんな国を作ることができる方々が育て愛しんだあなたが、お飾りであるはずがありません」

「ホルガー……ありがとう」

 スバルは目をパチパチとして何時しか止まっていた涙の残りを服の袖で拭うと、にっこりと微笑んだ。

「あなたはこの国に必要なお方なんですよ。だから、あなたの選んだ選択ならば、誰もせめることはありません。勿論私も」

 ホルガーはそう言うと、スバルに手を差し出した。

「お部屋へ帰りましょう? どうせ、今日のパーティは何時ものごとく立食会に変わっている筈ですから」

 ホルガーはニヤリと笑いながらそう言うと、スバルはその手に自分の手を重ねた。

「不思議だわ」

 スバルは自分の手をまじまじと見ながら呟いた。

「えっ?」

「私、男性に触られるのは好きじゃないのよ」

 ホルガーはその言葉を聞き、慌てて自分の手をスバルの手から離した。

「違うの! そういう意味で言ったんじゃないのよ。私、男性に触られるのは嫌いなのに、あなたの手は大好きなのよ」

 スバルはそう言うと、自らホルガーの手をとって部屋へと歩き始めた。

 その光景を見たほかの使用人達は、まるで恋人同士のようだとひっそりと顔を赤らめたという。

 

「それにしてもスバルの照れ屋にも困ったものねー」

 コルは目の前の料理を食べながらそう言った。

 ホルガーの言ったように、主役のいなくなったパーティは残った料理が勿体無いという理由で立食会になっていた。その所為か、最初は若い男性しかいなかったのだが、今はパーティホールに国のいろんな人たちが集まっている。この王宮の敷居の低さも王の人柄やこの国の平和を表している。

「うむ。婚約者の条件に、あいつの手の甲にキスができる者とでも付け加えといてやろうか?」

 タウリはニヤリと笑いながらコルを見た。

「まぁ! それも素敵ね。でも、もし見つからなかったら如何するおつもり?」

 コルはクスクスと笑いながら、キラキラと金色に光る髪の毛をなびかせた。

「見つからなかったら婿なんていらないさ。私が何百年でも生きてやる!」

 タウリはそう言うとグッと拳を握った。

「あらあら、いくらスバルを他の男性にとられるのが嫌だからって。でもね、あなた。私知ってるのよ? あなたが本当は何を考えているかなんて」

 コルはにっこりと笑うと、グラスを満たすワインを飲み込んだ。

「私は何も考えてなんか……」

 タウリは少し焦った様子を見せながら、こちらもワインを飲み込んだ。

「まぁ、それは当の二人が如何するのかゆっくり見学しましょう。多分、先ほどの条件をつけると、婚約者なんて世界中を探しても唯一人しか見つからないんだから」

 コルは全てが分かっているかのように広間を見回して、もう一度にっこりと笑った。

 

 婚約者の条件、姫の手の甲にキスができる者。

 この条件を難なくこなせる一人の男性がいるのはまだ誰も――本人達すら知らない事実。

 

 

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